システム代謝学
- 次世代メタボロミクスに資するクロマトグラフィーと質量分析の技術開発
- 医学応用を目指した代謝物の自動化・定量分析技術開発
- 代謝統合オミクス解析による疾患メカニズムの解析
- メタボロミクスの標準化・品質保証研究
- AIによるメタボロミクスデータ解析・解釈の自動化技術の開発

代謝をとらえ、生命を読み解く──次世代メタボロミクス技術の開発と応用
本研究室では、「代謝」という視点から生命現象を解き明かすことを目指し、メタボロミクス研究を中心に展開しています。
メタボロミクス:高解像度の表現型解析
生物の細胞では、DNAに記された遺伝情報がRNAを経てタンパク質へと変換されます(セントラルドグマ)。合成されたタンパク質は酵素・トランスポーター・受容体として機能し、細胞内の代謝反応を精巧に制御しています。メタボロミクスは、こうした代謝反応の結果として生じる数百〜数千種類の代謝物を包括的に測定・解析する研究分野です。遺伝子やタンパク質の発現解析だけでは見えにくい「細胞の実際の状態(表現型)」を、代謝プロファイル(メタボローム)として直接かつ高解像度に捉えられる点に、その大きな強みがあります(図1)。
図1
【研究の柱】
1. 次世代メタボロミクスを支える分析技術の開発
液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)や超臨界流体クロマトグラフィー質量分析(SFC/MS)を駆使し、糖・アミノ酸・有機酸・核酸などの親水性代謝物から、脂肪酸・リン脂質・ステロイドなどの疎水性代謝物まで、幅広い極性の代謝物を高分離・高感度で測定する技術を開発しています。また、微小な組織切片や極めて少量の生体試料からでも代謝プロファイルを取得できるよう、分析感度のさらなる向上にも挑戦しています。
2. 医学応用に向けた高精度・標準化分析技術の確立
臨床応用や大規模研究において信頼性の高いデータを提供するため、試料調製の自動化や安定同位体標識化による高精度定量技術の開発を進めています。また、施設間比較やリファレンス試料の整備を通じたデータの標準化・品質保証にも取り組み、どの施設でも同じ品質のデータが得られる環境の構築を目指しています。さらに、AI技術を活用した代謝物同定や解析結果の自動解釈により、メタボロミクスデータをより迅速かつ正確に活用できる解析基盤の整備も推進しています。
3. 代謝統合オミクス解析による疾患メカニズムの解明
ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオームといった上流の分子情報とメタボロームデータを統合解析することで、がん・代謝疾患・免疫異常などにおける代謝ネットワークの変容や病態制御の仕組みの解明に取り組んでいます。「なぜ病気になるのか」を代謝の言葉で語ることを目指しています。
これらの研究を通じて、当研究室は医療・生命科学の発展に貢献する次世代メタボロミクス基盤の確立を目指しています(図2)。
図2
