健康スポーツ科学

神経情報学

神経情報を解読し制御する
  • AIと神経情報を融合することで神経情報はどのように制御されるか?
  • ヒトの頭蓋内脳波を含むビッグデータとAIで脳や神経活動の情報表現を解明する
  • 神経情報の解読技術を開発しBrain-Machine Interfaceとして臨床応用する
  • 脳情報解読とニューロフィードバックを組み合わせた可塑性誘導の臨床応用
  • 力学系を用いた運動制御の解明
教授 栁澤 琢史
健康スポーツ科学講座 神経情報学教室
神経情報学教室は、大学院医学系研究科運動制御学教室の後継教室として、先代の佐藤宏通教授から引き継ぎ、2024年11月に発足しました。我々は運動機能の向上と再建・代替、疾患診断・治療や健康管理のための神経情報学を構築することを目指して活動しています。

神経の情報表現を解明し、神経情報の解読・制御技術を開発し、医療へ応用する

1. Brain-Machine Interface

脳波などの生理信号のビッグデータに機械学習(人工知能)を適用することで、ヒトの意図や視覚認知、思考状態などに関連する神経情報を解明できます(Nat. Comm. 2024)。我々はヒトの頭蓋内へ留置された電極から計測した頭蓋内脳波から脳情報を解読する技術を開発し、これを用いてロボットを制御したり、想像した画像を画面に提示するBrain-Machine Interface(BMI)を開発してきました(Ann. Neurol., 2012, Comm. Biol., 2022, 図A, B)。この技術は、体が動かない患者さんの運動機能再建や意思伝達補助に医療応用されます。

2. Neurofeedback

BMIを使い身体の代わりにロボットやアバターを脳活動と繋げることで、脳活動に可塑的変化を誘導し、運動制御に関わる脳活動と機能との関係を明らかにできます。また我々は、腕を失った後にないはずの腕が痛む幻肢痛に対して、BMIのロボットを動かす訓練をすることで、痛みを軽減できることを示しました(Nat. Comm. 2016, Neurology 2020, 図C)。これはニューロフィードバック(NF)治療と呼ばれます。脳情報を解読し、その情報を使ったNFによる疾患治療法を開発します。

3. 脳波の神経情報解読

脳波の解読技術は、認知症やてんかんなどの診断にも応用できます(Neural Net. 2024)。脳波に、どのような脳情報が表現されているかを数理的に解明することで、脳活動のマクロなダイナミクスを理解できます(Comm. Biol. 2023)。我々はAIや新しい数理手法を用いて神経の情報表現を明らかにします。

4. 神経情報学

ウエアラブルセンサーなどを用いて日常的に計測される生体信号を使い、健康管理や健康増進を目指します。神経情報は脳波などだけでなく、筋電図や運動解析データなど、ヒトの状態を推測するための生理信号を広く含みます。我々は、侵襲的な頭蓋内脳波からウエアラブルセンサーまで広く生体信号を神経情報としてビッグデータ化し、情報を解読し制御することで、健康増進から神経機能再建まで多様な医療応用を目指します。このために、医学だけでなく、情報や工学、神経科学など異分野を融合した研究を行える人材育成を目指しています。

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