腹膜透析施行時のトラブルシューティング
出口部管理・処置の時の注意事項
1.PDカテーテル挿入術後の出口部
手術直後の出口部は発赤や、出血を認めることもあります。しかし、これらは出口部管理を行っていくことで、次第に軽快していきます。出口部が上皮化してくると、カテーテルを軽く引っ張っても皮下組織と固定されるようになり、きれいな出口部が完成します。
術後直後の創部・出口部
手術直後の出口部は赤みを帯びていますが、毎日の出口部洗浄や出口部に負担がかからない固定を行っていれば、次第に消失していきます。
PD導入後3カ月の出口部
2.出口部洗浄を行う前に
出口部管理に必要な物品が揃っていることを、確認しましょう。
《出口部管理:必要物品の準備(例)》 |
①生理食塩水20ml(+各種消毒液) ②滅菌綿棒 ③ガーゼ ④Yガーゼ ⑤優肌絆 ⑥ゴミ袋 |
※バッグ交換時と同様に、手洗いとマスク装着は忘れずに行いましょう。
出口部洗浄方法やカテーテル固定、テープ・ガーゼ貼付方法は施設で異なります。消毒液はポピドンヨード、クロルヘキシジン溶液、次亜塩素酸溶液等を用いることが多いです。患者さんが通院する病院・クリニックに確認して下さい。
3.出口部・皮下トンネルの観察
<出口部の観察>
出口部の評価スコアは4点以上を感染とみなします。ただし、膿性浸出液が認められる場合は、排膿のみでも感染として対応します。
<ダウングロスの観察>
ダウングロスとはカテーテル出口部周囲の皮膚が皮下の組織にのめり込んで出口部が皮膚表面から深くなり、ポケット状になっている部位です(赤矢印)。このダウングロスは、カテーテルの固定不良や剥離した上皮の蓄積による出口部感染の原因となります。出口部を洗浄する際は、ダウングロスまでしっかりと観察して下さい。
<皮下トンネルの観察>
皮下トンネル部(赤線の箇所)を出口部に向かって指で押しながら、出口部から排膿が出ないことを確認します。圧痛を伴う場合は、トンネル感染の兆候です。感染を合併した場合、周囲の組織がもろくなり、カテーテルのカフが出口部側にずれることもあります。
<カテーテルの観察>
接続チューブの緩みや、カテーテル本体の傷や亀裂がないか確認しましょう。
4.出口部洗浄方法例
- ①チューブを引っぱらないように、紐でとめます。
- ②出口部洗浄は泡を用います。出口部周囲の洗浄は10×10cmの範囲を目安にして下さい。
- ③出口部の洗浄は出口部のカテーテルをつまみながら洗浄します。
- ④カテーテルの下側も忘れずに洗浄して下さい。
- ⑤指腹に力を入れて、固定用のテープによる汚れが残らないようにしっかり洗浄します。
5.カテーテルの固定例
<テープの貼り方>
テープの貼り方も様々です。カテーテルの向きは様々で、自然な向きを損なわないように緩やかに固定します。かぶれやすい方は、貼る位置を毎日変えましょう。
テープ2~3本で貼る方法を推奨しています。ハサミはカテーテルの近くでは使用しないで下さい。カテーテル損傷のリスクがあります。可能であればハサミを使用しない方が望ましいです。チタニウムアダプター部分のテープ固定は、金属が皮膚を刺激するため避けましょう。