腹膜透析施行時のトラブルシューティング
PDの食事療法の注意事項
透析患者における食事療法の目的は、末期腎不全の病態に見合った栄養素を必要かつ十分に摂取して、元気な透析ライフをおくるための栄養サポートを行うことです。過度な制限はむしろ逆効果となります。病態に見合った栄養素を必要かつ十分に摂取することが重要です。
PD患者の食事療法の基本4項目
1.食塩と水分
食塩は1日6g未満の摂取が基本となります。水分制限に関しては、残存腎機能の程度やPD除水量により異なりますが、体重増加がないようにする必要があります。体液過剰は、残存腎機能・腹膜機能低下につながり、高血圧の原因にもなります。減塩なしに、水分制限をすることは不可能です。減塩をすることで口渇感を抑え、水分制限も可能となります。減塩が、水分制限の第1歩です。
2.エネルギー
1日エネルギー摂取量の目安は、標準体重×30~35kcalとなります。腹膜透析液には浸透圧物質として、ブドウ糖が含まれているので、透析液から吸収されるエネルギー量を計算して1日のエネルギーを考える必要があります。
総必要エネルギー量 ‐ 腹膜吸収エネルギー量 = 食事で摂るエネルギー量
<透析液からのエネルギー吸収量>
透析液のブドウ糖濃度 | 1.5L | 2L |
---|---|---|
1.5% | 57kcal | 76kcal |
2.5% | 95kcal | 127kcal |
3.たんぱく質
1日たんぱく質摂取量の目安は、標準体重×0.9~1.2gとなります。たんぱく質の過剰摂取は尿毒症物質の蓄積につながりますが、過度なたんぱく制限は、低栄養の原因となり、筋肉量低下や易骨折性につながるためむしろ逆効果です。またたんぱく質の適切な摂取は、リン値のコントロールにもつながります。リン値は適切な薬剤投与でもコントロール可能ですので、過度なたんぱく制限、低栄養は避けましょう。
4.カリウム
カリウム摂取量には明確な基準はありません。CKD患者やHD患者では、1日2000mg以下の制限が必要になりますが、PD患者では比較的カリウムが体内から喪失しやすいためです。そのため、PD患者では高カリウム血症、低カリウム血症どちらにも注意が必要になります。採血データを確認しながら、患者さんごとに適切な摂取量を考える必要があります。