皮膚免疫疾患治療学
皮膚の構造から、免疫寛容と疾患の成り立ちを解き明かす
- 表皮分化と免疫寛容:組織構造は免疫応答をどう方向づけるか
- ロリクリンと自己抗原提示:制御性T細胞の選択を探る
- 出生後の免疫教育と炎症記憶の形成
- 紫外線応答と皮膚腫瘍における免疫監視
- 慢性炎症性皮膚疾患の病態解明と治療への応用
表皮の構造から免疫の成立原理を解き明かす
皮膚は、外界から身体を守るバリアであると同時に、免疫系が自己と外来抗原を識別する場でもあります。私たちは、表皮の最終分化を担うロリクリンに着目し、「組織の構造そのものが、免疫寛容と免疫記憶の形成を方向づける」という構造免疫(Structural Immunity)の考え方を研究しています。
通常、表皮は絶えず更新されながら、樹状細胞やT細胞との相互作用を通じて、過剰な炎症を防ぎ、必要な免疫監視を維持しています。私たちのロリクリン欠損マウスの研究では、表皮分化の変化が、抗原提示環境、制御性T細胞(Treg)のレパトア構成、紫外線照射後の免疫応答に影響することが示されました。これらの知見をもとに、自己抗原がどのように提示され、適切なT細胞クローンが選択されるのかを検証しています。特に、出生後の免疫発達期に形成される寛容と、成人期の炎症・腫瘍免疫の関係を重視しています。
また、皮膚疾患の診療に根ざした研究を推進しています。アトピー性皮膚炎や乾癬、化膿性汗腺炎などの慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、メラノーマをはじめとする皮膚悪性腫瘍を対象に、組織環境が治療反応性や再発に与える影響を探ります。皮膚科学・免疫学・臨床医学を横断し、病態の理解を新たな治療戦略につなげることを目指します。
掲載図:『寛容成立の基盤としての表皮分化』。正常な表皮構造と分化障害における抗原提示・T細胞選択の概念図
