2012年

 

村上 正晃≪免疫発生学≫ 「局所的な神経の活性が、免疫細胞の血液脳関門の通過ゲートを形成する」

免疫発生学
クリックで拡大表示します

2012年2月3日 発表
掲載誌Cell, 148, 447–457 (2012)

局所的な神経の活性が、免疫細胞の血液脳関門の通過ゲートを形成する

今回の論文では、末梢神経系が活性化することで、脳や脊髄(中枢神経系)に免疫細胞の入り口となるゲートがつくられ、そのゲートを通過して病原性のある免疫細胞が血管から中枢神経系に侵入し、病気が発症することを分子レベルで明らかにしました。これまで中枢神経系の血管は、免疫系の細胞をはじめ、ウイルスや大きなたんぱく質を脳や脊髄に通過させない、血液脳関門を形成すると考えられてきました。しかし、中枢神経系にもウイルスが感染することや、さまざまながん、難病などが発症することが知られており、これらを制御するために血液脳関門にも免疫細胞などの入り口となるゲートがあると予想されていました。しかしこのゲートがどこにあるのか、どのような過程やメカニズムで機能するのかは全く不明でした。私たちは、中枢神経系の難病である多発性硬化症のモデルマウスを用いて、免疫細胞の中枢神経系へのゲートはある特定の部位に形成されること、またその形成が末梢神経系の活性化によるものであることを明らかにしました。本研究成果は、神経系と免疫系の関わりを分子レベルで明らかにしたもので、中枢神経系の難病やがんなどに対する予防法や治療法の開発に新たな可能性を与えます。また、ストレスなどの精神状態とさまざまな病気との因果関係の解明にもつながることが期待されます。

URL http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molonc/www/