2013年

 

濱﨑 万穂、吉森 保≪遺伝学≫ 「オートファゴソームは、小胞体とミトコンドリアの接触点で形成される」

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2013年3月4日 発表
掲載誌Nature (2013) doi:10.1038/nature11910

オートファゴソームは、小胞体とミトコンドリアの接触点で形成される

細胞の中に壊れたミトコンドリアや古いタンパク質などが溜まったり病原体が侵入したりすると、細胞の健康が損なわれ、その結果アルツハイマー病、発がん、心不全、糖尿病、感染症、炎症など多岐にわたる病気が起こります。それを防ぐために細胞はオートファジー(自食作用)という仕組みを持っています。オートファジーを担うオートファゴソームは、膜で包まれた直径約1μmのいびつな球形のオルガネラであり、必要に応じて細胞の中に現れ、細胞にとって有害な上述のものを取り込んで分解する働きを持つ清掃マシーンのような存在です。どこからともなく現れ役目を終えると消えるので、どこで作られているのかがこれまで40年近く論争の的になってきました。今回我々は、オートファゴソームが別のオルガネラであるミトコンドリアと小胞体の接触点で造られていることを、レーザー顕微鏡や電子顕微鏡、遺伝子工学技術などを駆使して突き止めました。技術的に極めて困難な、接触点でオートファゴソームが生成する様子の動画撮影に世界に先駆けて成功した点が特筆されます(図参照)。例えると、ミトコンドリアは発電所、小胞体はタンパク質生産工場と役割が違いますが、所々で接しており、そこで膜の成分である脂質の受け渡しがあるなど接触点の重要性が知られるようになっていました。今回その接触点が、オートファジーにも大事な役割を果たしていたことが初めて明らかになりました。なぜオートファゴソームがこのミトコンドリア・小胞体接触点で造られるのかについては、今後解明すべき新たな謎です。オートファゴソームを造るのに必要な膜の成分を供給しているのかも知れません。また我々は、オートファゴソームを作るのに働くAtg14Lというタンパク質がシンタキシン17というタンパク質によってこの接触点まで運ばれてくるとオートファゴソームが造られ始めることも明らかにしました。生産場所が特定されたので、オートファゴソームの生産をコントロールし病気を治療する薬剤を探したり設計したりしやすくなりました。

URLhttp://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/yoshimori/   遺伝学