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  • 上野 将紀、藤田 幸、山下 俊英≪分子神経科学≫ 「脳発達期においてミクログリアは大脳皮質第5層神経細胞の生存に寄与する」

上野 将紀、藤田 幸、山下 俊英≪分子神経科学≫ 「脳発達期においてミクログリアは大脳皮質第5層神経細胞の生存に寄与する」



免疫制御学-2
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2013年3月25日 発表
掲載誌Nature Neuroscience (2013)

脳発達期においてミクログリアは大脳皮質第5層神経細胞の生存に寄与する

活発な神経回路の構築が行われる発達期の脳では、神経細胞の生存を維持する仕組みが存在すると考えられてきましたが、その実体は不明のままでした。私たちは、脳内の免疫細胞とされるミクログリアが、発達期の脳において特定の神経細胞の生存の維持に働くことを初めて発見しました。本研究ではまず、ミクログリアが生後一定の期間中に、神経軸索が通過する部位に集まることに着目し、その生理的役割を明らかにすることを目指しました。そこで、ミクログリアのみを除去したり活性化を抑制する薬剤・遺伝子改変マウスを用いて、脳内に起こる変化を観察しました。すると、大脳皮質の第5層に存在する神経細胞に特異的に細胞死が引き起こされることがわかりました。大脳皮質第5層には、運動機能をつかさどる皮質脊髄路神経細胞が存在しますが、これら神経細胞の軸索周囲にミクログリアが集まっていることがわかりました。これらの結果から、ミクログリアが軸索と密接に関わりながら、大脳皮質第5層神経細胞の生存を維持していることが明らかになりました。さらに、ミクログリアから放出される因子を網羅的に調べた結果、IGF1が神経細胞の生存に関与していることがわかりました。今回の研究により、脳内の免疫細胞と考えられていたミクログリアの新たな機能によって、発達期に神経回路が維持されるメカニズムが明らかになりました。特に皮質脊髄路神経細胞は、脊髄損傷、脳血管障害、筋萎縮性側索硬化症といった脳の病態下で傷害を受け、その結果、運動機能に重篤な障害がもたらされることが知られています。ミクログリアによってこれら神経細胞を保護する効果を誘導することができれば、新たな治療法の開発につながると期待されます。

URLhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/   分子神経科学