\腸内細菌叢の異常が引き起こす腹部症状に、新しい治療の選択肢を/ 腸内細菌叢移植の医療開発に向けた クラウドファンディング開始 ~2026年3月17日開始~
2026年3月17日
概要
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 炎症性腸疾患(IBD)グループは、「腸内細菌叢の異常」に起因すると考えられる難治性の消化器症状に対する新たな治療法として、「腸内細菌叢移植(Fecal microbiome transplantation: FMT)」の医療開発を目的としたクラウドファンディングを2026年3月17日に開始しました。
本研究は、疾患名ではなく「腸内細菌叢の異常」という病態に着目し、FMTが必要な患者さんを診断する指標の整備と、安全性を最優先としたドナー基準の構築を通じて、FMTの有効性と安全性を検証するものです。
背景
近年、次世代シーケンス(NGS)技術の進歩により、腸内細菌叢の構成や多様性がヒトの健康維持に重要であることが明らかになってきました。腸内細菌のバランスが崩れた異常な状態(ディスバイオーシスと呼ばれます)」は、炎症性腸疾患だけでなく、さまざまな慢性疾患やその治療過程で生じ、下痢や腹痛などの持続する腹部症状の原因となり、患者さんの生活の質(QOL)を低下させることが知られています。
しかし、腸内細菌叢の異常の重要性が明らかになってきた一方で、腸内環境へ直接介入できる治療法は限られています。これまで多くの患者さんが症状に悩みながらも、医療側が提供できるのは下痢止めや鎮痛薬などの対症療法や生菌製剤の投与が中心で、根本的な介入は困難でした。その背景には、「腸内細菌叢の異常」という概念が曖昧で、治療対象を明確に定義できていなかったという課題があります。
例えば、腸炎自体は改善しているにもかかわらず下痢が続き日常生活に支障をきたしている潰瘍性大腸炎の患者さん、抗生剤治療後に腸内環境が乱れ下痢や腹痛・腹部膨満間といった腹部症状が長引く患者さん、将来の妊娠や就職といった人生設計に腹部症状が障害となっている若年の過敏性腸症候群や炎症性腸疾患の患者さんなど、既存治療が無効であることにより多くの患者が苦しまれている現状があります。
腸内細菌叢移植(FMT)は、健康なドナー由来の腸内細菌叢を移植することで腸内環境そのものを再構築できる数少ない治療法であり、これまで介入が難しかった領域に直接アプローチできる重要な医療技術となる可能性があります。これまでのFMT研究は特定の疾患を対象に行われてきましたが、本研究は既存の疾患名ではなく「腸内細菌叢の異常」という病態に着目し、FMTが必要な患者さんを診断することに挑戦します。本研究の対象はIBDに限定されず、原疾患が改善しても腹部症状(下痢、腹痛、腹部膨満、便秘)が持続し、その背景に「腸内細菌叢の異常」が関与していると考えられる患者さんです。
本研究では、腸内細菌叢異常の中でも治療介入が必要な状態を「Dysbiosis (ディスバイオーシス)」として客観的に定義し、それに対する具体的な介入方法としてFMTを確立することを目指します。これにより、これまで十分な治療選択肢がなかった患者さんに新しい医療の可能性を届けるだけでなく、「検査では異常がない」と言われながら症状に悩み続けてきた方々に、初めて治療という選択肢を提示できる可能性があります。
さらに本研究では、免疫と腸内細菌叢の相互作用に関する長年の研究実績を有するIBDグループが中心となり、大阪大学医学部附属病院高度救命センター(清水健太郎講師)、大阪大学大学院医学系研究科感染制御学(忽那賢志教授)、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(竹田潔教授・鎌田信彦教授)および大阪大学微生物病研究所(中村昇太教授)との共同研究体制のもとで、最先端の解析技術を活用した科学的検証を進めます。
しかしFMTは安全性確保のため、厳格なドナー検査、細菌叢の精製・保管、微生物解析、品質管理体制の維持など、研究段階であっても医療レベルの体制整備が不可欠です。本分野はまだ発展途上であり、これらを実施するための資金は既存の公的研究費だけでは賄いきれないのが実情です。
そこで私たちは、未来の医療を社会と共に創るという考えのもと、クラウドファンディングという形で広く支援をお願いすることにしました。皆様からのご支援は、安全に実施できる体制の構築と、症状に悩み続ける患者さんへ新しい可能性を届けるための基盤となります。
クラウドファンディング概要
本プロジェクトは、腸内細菌叢移植(FMT)を安全かつ科学的に検証し、医療として確立することを目指す研究開発プロジェクトです。研究の推進には、通常の診療体制を超える高度な安全管理および解析体制の整備が不可欠であり、皆様からのご支援はその基盤構築に直接活用されます。
- ご支援により実現すること
- 厳格なドナー検査体制の構築・維持
- 腸内細菌叢の高精度解析(NGS解析等)
- 腸内細菌叢の精製・保管を含む品質管理体制の整備
- Dysbiosis診断指標(Osaka Dysbiosis Index)の確立
- FMTの有効性と安全性を検証する臨床研究の推進
これらはすべて、将来的に腸内細菌叢医療を研究段階から実際の医療へ発展させるための重要な基盤となります。
- 目標金額と方式
- 第一目標金額:300万円
本プロジェクトはAll-or-Nothing方式で実施され、募集終了日までに目標金額に達しなかった場合は、ご寄付は返金されます。 - 第一目標達成後は、第二目標500万円、最終目標800万円を設定し、研究体制の拡充を図ります。
- 第一目標金額:300万円
- ご寄付の取り扱い
本クラウドファンディングへのご寄付は大阪大学へのご寄付となり、税制上の優遇措置の対象となります。 - プロジェクト情報
|
項目 |
内容 |
|
プロジェクト名 |
腸内細菌叢の移植で、難治性の消化器症状に悩む患者さんに希望の光を |
|
研究主体 |
大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 |
|
研究代表者 |
特任助教 良原丈夫 |
|
研究責任者 |
教授 小玉尚宏 |
|
研究の特徴 |
Osaka Dysbiosis Index(ODI)による評価、厳格なドナー基準の整備 |
|
目的 |
Dysbiosisに関連する難治性消化器症状に対するFMTの医療確立 |
|
資金使途 |
ドナー検査、細菌叢解析、品質管理、臨床研究費 |
|
URL |
https://readyfor.jp/projects/handai-FMT |
研究代表者コメント
<良原 特任助教のコメント>
腸内細菌は目に見えませんが、私たちの健康に深く関わっています。これまで腸内細菌叢の異常は分かっていても、直接介入できる治療法は限られていました。本研究は、腸内環境の状態に基づいて治療を考える新しい医療の枠組みをつくる挑戦です。薬だけでは改善が難しい腹部症状に悩む患者さんに、新たな選択肢を届けたいと考えています。
皆様のご支援が、未来の医療を前に進める力になります。
大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 特任助教 良原丈夫


