証明書・各種支援・提出様式等

山村賞

第11代大阪大学総長として大阪大学及び大阪大学医学部の発展に大きな足跡を残された故山村雄一名誉教授を記念して、本学を代表しうる、特に優れた学生に山村賞を授与しています。

山村賞受賞者一覧(平成15年度~)

令和4年度山村賞受賞者

水谷夏希 博士課程4年

Interaction between S4 and the phosphatase domain mediates electrochemical coupling in voltage-sensing phosphatase (VSP) 

電位依存性ホスファターゼ(VSP)は電位センサードメインと酵素ドメイン間の直接相互作用により電気信号を化学信号に変換する

山村賞受賞のことば  水谷夏希

この度、名誉ある山村賞を賜り大変光栄に存じます。修士課程から6年間、研究に関することだけでなく一人間としてたくさんのご指導をいただきました岡村康司教授をはじめ、統合生理学教室の皆さまにはこの場を借りて心より感謝申し上げます。ヒトの体は数十兆個もの細胞で構成されており、個々の細胞の膜上にはイオンチャネルをはじめとする電位依存性膜タンパク質分子が存在しています。私は電気生理学的手法を用いて、それらの分子メカニズムを明らかにすべく研究を行ってきました。このような膜タンパク質分子は極めて小さいにもかかわらず、生物が考えたり行動したりするのに不可欠で、その機能異常は不整脈やてんかんなどの重篤な疾患の原因となり得ます。私は、生命活動はもとより疾患にも関連する分子の詳細を解明することで、分子機構に則した効果的な治療法開発の足掛かりを築き、研究成果を臨床医療に還元したいと強く思っています。今回の受賞を励みに、医学の発展に貢献できるよう今後もより一層精進してまいります。

白井雄也 博士課程4年

Multi-trait and cross-population genome-wide association studies across autoimmune and allergic diseases identify shared and distinct genetic component     

自己免疫・アレルギー疾患を横断的に検討した多形質ゲノムワイド関連解析

山村賞受賞のことば  白井雄也

この度は山村賞という大変名誉ある賞を賜り、誠に光栄に存じます。ご指導ご鞭撻を賜った熊ノ郷淳教授、岡田随象教授をはじめ、実験をご指導していただいた呼吸器・免疫内科学教室の先生方、データ解析に際してご助言を頂いた遺伝統計学教室の先生方、そして膨大なゲノムデータの構築にご協力いただいた全ての方々に厚く御礼申し上げます。近年、ビッグデータ解析は注目され日々新しい解析手法が提唱されていますが、重要なのは着眼点を明確にしてデータの品質管理を徹底するという基本的な事項の積み重ねであると大学院にて学びを得ることができました。今回の研究では、自己免疫疾患とアレルギー疾患の遺伝的背景の違いと、一部共通した影響を及ぼす遺伝子多型の存在を明らかにしました。今回の受賞を励みに、臨床現場のデータから得られた知見をもとに、臨床へ還元できるような研究を発展させられるよう今後も精進してまいります。

春名壯一朗  学部6年

Local production of broadly cross-reactive IgE against multiple fungal cell wall polysaccharides in patients with allergic fungal rhinosinusitis   

山村賞受賞のことば 春名壯一朗

この度は山村賞という名誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究において、長年ご指導くださいました菊谷仁先生、榊原修平先生、武田和也先生、ならびに在学中お世話になりました他研究室の先生方、この場をお借りして心より感謝申し上げます。私は在学時の研究テーマとしまして、アレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFRS)における抗原特異的IgEの性状解析を行いました。本研究を経て、今回扱った疾患に限らない幅広い免疫学領域の知識や実験技術を習得することができ、今後研究活動を行っていく上での基礎を習得することができました。今回の受賞を励みに、継続的に医学研究を続け、少しでも医学の発展に貢献できるよう、より一層精進して参る所存であります。

Dear Prof. Daron M. Standley, Thank you for your warm welcome when I was in the 5th grade. With your help, I have been acquiring further knowledge and skills in research activities. I will absolutely contribute to our research.

令和3年度山村賞受賞者

伯井秀行 博士課程4年

Loss-of-function mutations in the co-chaperone protein BAG5 cause dilated cardiomyopathy requiring heart transplantation  

拡張型心筋症の新規原因遺伝子BAG5の同定と心筋細胞におけるタンパク質恒常性維持機構の解明

山村賞受賞のことば  伯井秀行

この度は山村賞という非常に名誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。研究についてご指導くださいました 坂田 泰史教授、高島 成二教授をはじめとした循環器内科学教室、医化学教室の先生方、ならびに研究生活を 絶え間なくご支援いただいた全ての皆様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。私は博士課程の研究としまして、網羅的遺伝子解析を用いて心臓移植を要する拡張型心筋症の新規原因遺伝子を同定し、その 心不全発症における病態機序の解明を行いました。本研究を完遂するためにはバイオインフォマティクスから細胞・動物実験までの幅広い研究分野に関する知識と技術を必要とし、これら全てについて様々な先生方からご指導を仰ぐことができる素晴らしい環境で研究をさせていただいた事を幸甚に存じます。今回の受賞を励みとしまして、医学研究の発展に少しでも貢献できるよう、より一層精進してまいる所存であります。

井上真生  学部6年

An Aicardi-Goutières syndrome–causative point mutation in Adar1 gene invokes multiorgan inflammation and late-onset encephalopathy in mice

Aicardi-Goutières 症候群の原因となる Adar1 遺伝子点変異はマウスにおいて多臓器での炎症と遅発性の脳症を惹起 する

山村賞受賞のことば 井上真生

この度は山村賞という大変栄誉ある賞を賜り、身に余る光栄に存じます。在学中に直接のご指導を賜った河原行郎教授、中濱泰祐助教をはじめとした神経遺伝子学講座の皆様、また、研究に多大なるお力添えをいただいた病態病理学講座の森井英一教授に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。本研究では、遺伝性の難病である Aicardi–Goutières 症候群の疾患モデルマウスの作製に取り組み、RNA 編集異常の観点からいくつかの新しい知見を見出すことができました。同疾患に限らず、根本的な治療法が存在しない疾患はいまだに多く残されており、そうした現状を突き崩していくことは、我々医師や医学研究者の果たすべき責任でもあります。今後も受賞を励みに、大阪大学医学部の先輩諸賢がそうであったように、医学および医療の発展に貢献できるよう一層精進していく所存です。

令和2年度山村賞受賞者

佐田直基  学部6年

Inhibition of HDAC increases BDNF expression and promotes neuronal rewiring and functional recovery after brain injury

HDACの阻害は脳損傷後のBDNF発現と神経回路の再編成、運動機能回復を促す

山村賞受賞のことば 佐田直基

この度は山村賞という、非常に栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。2年生の夏に現在の研究室に所属させてもらって以降、5年もの長い期間、研究をはじめ大会での発表や研究留学など、様々な掛け替えのない体験を積ませていただきました。大学に入学したてで右も左もわからない状態の私に、真摯に向き合い、あたたかくも粘り強く指導をしてくださった、山下俊英教授、藤田幸准教授をはじめ、技術的なサポートのみならず精神面でも支えてくださった分子神経科学教室の皆様に、心より感謝申し上げます。同研究室では、「HDAC阻害の脳損傷後の運動機能回復に与える影響」をテーマに、vitrovivoでの様々な手技や得られたデータの解析手法、そして研究のデザインの立て方やまとめ方など、研究者としての基礎となる部分をご指導いただきました。この研究が将来的に脳外傷患者のよりよい治療に繋がることを願うとともに、この掛け替えのない経験を活かして研究を進め、今後も基礎研究を通して少しでも医学に貢献できるようより一層精進してまいりたいと思います。

竹内太郎  学部6年

Impact of reproductive factors on breast cancer incidence: pooled analysis of nine cohort studies in Japan

日本人における女性生殖要因と乳がん罹患の関連

山村賞受賞のことば 竹内太郎

この度は、山村賞という大変名誉ある賞を賜り光栄に存じます。研究のご指導を賜りました祖父江友孝教授、北村哲久准教授をはじめとする環境医学教室の皆様、循環器内科学教室の先生方、医学統計学教室の先生方、救急医学教室の先生方、ならびに研究でお世話になった全ての皆様に心から御礼申し上げます。私は大学入学直後から統計学を独学で勉強してきました。勉強を進めていくうちに、実際に自分の手でデータ解析を行ってみたいと考えるようになり、大学2年生の末に環境医学教室の門を叩きました。それから約4年間、がん、循環器、救急、スポーツ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など様々な領域の疫学研究に取り組ませていただき、在学中に筆頭著者として計7本の論文を発表することができました。今回の受賞を励みに今後更に研鑽を積み、「医学・統計学両方の専門知識を持ち、患者さんにとってより良い医療を提供でき、医学の発展に貢献できる医師・医学研究者」を目指して、前進を続けてまいります。

水野彰  学部6年

Biological characterization of expression quantitative trait loci (eQTLs) showing tissue-specific opposite directional effects

組織特異的に逆方向の効果を示す発現量的形質遺伝子座(eQTLs)の生物学的特徴付け

山村賞受賞のことば 水野彰

大阪大学医学部の伝統ある山村賞の受賞者にお選びいただき、身に余る光栄に存じます。これまで学生生活を支えてくださった周囲の方々と、岡田随象教授をはじめとした遺伝統計学教室の先生方に、心より御礼を申し上げます。同教室では、大容量ゲノムデータの統計学的な解析手法を学ばせていただきました。疾患と関連性はあるものの生物学的意義が不明な変異・多型情報について、近傍遺伝子発現量の組織間差異の観点からアプローチし、手厚いご指導の下で研究成果を論文にまとめることができました。シーケンス技術およびその解析手法の発展は目まぐるしく、個々を追いかけていては、データ蓄積と技術開発のスピードの速さに飲み込まれてしまいます。いかに大局をつかみ医学的に意味のある解析へと導くかを、遺伝統計学教室にて学ぶことができました。いつか日常診療にインパクトのある成果につなげることができますよう、これからも精進してまいる所存です。