寄附講座

臨床遺伝子治療学

難治性疾患に対する画期的治療法の開発とトランスレーショナル・リサーチの実践を目指す
  • トランスレーショナル・リサーチを積極的に実践し、世界に通用する分子治療製剤の開発を産官学連携により実現する
  • 画期的な遺伝子治療法および核酸医薬の開発とトランスレーショナルリサーチによる臨床応用
  • 生活習慣病に対するワクチン療法の開発と臨床応用への実践
  • ペリオスチンを標的とした循環器疾患・悪性腫瘍に対する画期的治療法の開発
  • 脳梗塞、認知症、アルツハイマー病に対する新規診断・治療法の開発

 

 

分子レベルでの疾患病態研究から得られた知見を基にし、革新的治療法の開発とトランスレーショナル・リサーチの実践により臨床応用を目指す

1)循環器疾患に対する分子治療法開発

種々の循環器疾患の病態を分子レベルで解明し、新規分子療法の開発を行っています。下肢虚血疾患へのHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子治療のPhase I/IIaにおける長期間の有効性を大阪大学で明らかにしており、2014年より米国にて下肢および虚血性心疾患へのHGF遺伝子治療のPhase III臨床研究が開始されています。国内においては、大阪大学を含む7大学で先進医療として実施を予定しており、既に老年高血圧内科において先進医療として実施しています。一方、心不全[1,2]、トリプルネガティブ乳がん細胞の転移、糖尿病性網膜症、喘息、動脈瘤、動脈硬化、脳梗塞、変形性膝関節症[3]を含んだ様々な炎症関連疾患にぺリオスチン(PN)が関与することを確認しており、PN特異的中和抗体を独自に開発し(特許PCT承認済み)、抗体医薬の開発のための基盤研究を進めています。デコイ(核酸医薬)に関しては、NFkB(核内因子kB)デコイ・コーテイング血管拡張用バルーンカテーテルの臨床応用に向けて、透析患者の動静脈シャント不全を対象にした臨床治験を継続しています。

2)アルツハイマー病に対する新規治療法と早期診断法の確立

アルツハイマー病のタウ病理が経時的に進行するメカニズム[4,5]に注目し、これを標的とした根本的治療法の開発を進めています。また、認知症の超早期診断を可能にする低侵襲な診断用医療機器開発を目指した臨床研究を開始しています。

3)多角的視点からとらえた虚血性脳血管傷害の病態解明と治療法の開発

脳梗塞後の炎症制御に関わるRANKL(NFκB活性化受容体リガンド)/RANK系[6]をターゲットにしたRANKL部分ペプチド[7]および抗血栓ワクチンを用いた脳梗塞での新規治療の開発の研究を行っています。

4)生活習慣病を標的としたワクチン治療

抗体誘導型の新規治療ワクチンが生活習慣病治療の一つの選択肢となると考え、アンジオテンシンIIを標的とした高血圧ワクチンの開発を始めとした数多くのワクチンの開発を遂行しています。

5)新規抗菌性ペプチドによる皮膚潰瘍治療薬の開発

新規抗菌性ペプチドAG30は抗菌活性と血管新生作用を併せ持つペプチドであり、この特性を活かしたSRペプチド(AG30改良ペプチド)は皮膚潰瘍を対象とした外用剤としての開発を目指しています。糖尿病性潰瘍・下腿潰瘍の患者に対する医師主導治験(フェーズI/IIa)を終了し、次相は早老症(Werner症候群)の皮膚潰瘍を対象とした治験を予定しています。

【文献】

1. Taniyama et al. Hypertension 67(2):356-61, 2016.
2. Zempo et al. Hypertension 39(11):764-768, 2016.
3. Chijimatsu et al. BMC Musculoskeletal Disorders. 16: 215, 2015.
4. Takeda et al. Nature Commun. 6:8490, 2015.
5. Takeda et al. Annals of Neurology 80:355–367, 2016.
6. Shimamura et al. PNAS 111(22):8191-6, 2014.
7. Kurinami et al. Sci Rep 6:38062, 2016.