ゲノム生物学

遺伝子治療学

基礎から臨床へ、そして臨床から基礎へ
  • がん細胞の特性の解明とそれに基づく分子治療法の開発
  • 遺伝子発現制御機構の破綻による疾患発症機構の解明
ゲノム生物学講座 遺伝子治療学
当研究室は大学院重点化に伴って新設された研究分野であり、1999年4月より大阪大学医学部医学科基礎研究棟において研究活動を開始致しました。医学・生物学に根ざした遺伝子治療研究を推進し、基礎研究成果の臨床応用を実現するとともに、そこで生まれた課題の基礎研究を行い、難病治療への貢献をめざしています。

がん(癌)や先天性心疾患などの疾病に関わる遺伝子の発現制御機構の解明

私たちは、不活化センダイ・ウイルス粒子をもとにして、遺伝子やsiRNAを導入できるベクターであるHVJ envelope vector (HVJ-E)と言うドラッグ・デリバリー・システム(DDS)を開発しました。HVJ-Eは、がん細胞に作用すると細胞質内の核酸受容体を介したシグナル伝達機構を活性化し、これによって、がん細胞特異的な細胞死を誘導するとともに、免疫細胞にも働いて多彩な抗腫瘍免疫を誘導することが明らかになり、がん治療の臨床応用も進められています。私たちの研究室では、CRISPR/Cas9のゲノム編集法や高速シーケンサーを用い、またエピゲノムの解析手法や分子イメージング技術を用いて、がん細胞死誘導機序の解明を行っています。また、がん幹細胞の本質を担う遺伝子や、抗がん剤耐性を誘導する遺伝子発現機構についても、同様の方法により解明を進めています。

また私たちは、発生・分化に関わる多数の転写因子がヒストン修飾酵素と協調的に機能することで転写制御することを明らかにしてきました。すでに心発生において、転写制御因子群とRNA代謝制御因子群が相互作用し大きな分子ネットワークを形成していることを見出し、このネットワークによるRNAの量と質の制御機構の解明によって、今まで全く不明であった先天性心疾患発症の分子メカニズムに迫ることができると考えて研究を進めています。