寄附講座

健康発達医学

高血圧などの生活習慣病をワクチンで治療する
  • 生活習慣病が年に数回のワクチンで治療できれば、飲み忘れなどの薬剤アドヒアランス※の改善が期待できる
  • 自然免疫・獲得免疫の仕組みを理解し、がん・感染症ワクチンとは異なる独自の治療ワクチン開発を行う
  • ヒト臨床応用を念頭においたトランスレーショナルリサーチを実践する
  • 抗体医薬としての代替治療として本技術を活用することにより、医療費の削減も期待できる
  • がん・難病などの様々な疾患治療に本技術は応用可能である

抗体誘導を主眼とした治療ワクチンの臨床応用を目指す

超高齢社会の今、社会構造の変化や抗体医薬などの高価な医療の出現により、今後の我が国の医療の在り方において疾患の治療法にはコストや効率などを考慮したより多くの選択肢が求められるようになったと実感しています。特に高血圧・糖尿病などの生活習慣病に対して質の高い医療を保つ一方で、その予防・治療に費やす医療費をいかに抑えていくかというのが今後の大きな課題であると思われます。私たちはその課題への対策として、ワクチンが一つの選択肢となりうるのではないかと考え、生活習慣病治療を目指したペプチドあるいはDNAによる治療ワクチンに注力し、研究開発を行っています。生活習慣病の治療標的は一般に自己タンパク質であるため、がんや感染症のワクチンと異なり自己タンパク質に対する自己免疫疾患にならないような工夫が必要となり、独自の治療ワクチン戦略が求められます。これまで私たちはアンジオテンシンII(Ang II)を標的とした高血圧ワクチンの臨床応用を目指した開発[1,2]、DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ4)を標的とした糖尿病治療ワクチン[3]、脂質異常症治療を目指したLp(a)(リポプロテインa)ワクチン[4]、抗血管新生治療を目指したがんワクチンの開発[5]などを報告しており、現在国内外の多くの研究室と共同研究を行いながら、新しい治療法の開発に挑戦しています。

【文献】

1. Nakagami et al. PLoS One 8(3):e60493, 2013.
2. Koriyama et al. Hypertension 66(1):167-74, 2015.
3. Pang et al. Proc Natl Acad Sci USA 111(13):E1256-63, 2014.
4. Kyutouku et al. Sci Rep 3:1600, 2013.
5. Kyutoku et al. Sci Rep 3:3380, 2013.