寄附講座

代謝血管学

生活習慣病と動脈硬化症〜From Basic Science To Clinical Application〜
    • メタボリックシンドローム・内臓脂肪症候群の分子病態解明
    • アディポネクチンの生理作用の解明と医学応用
    • メタボリックシンドロームと動脈硬化症を結ぶ鍵分子とは?
    • 肥満2型糖尿病に対する治療戦略の構築

大阪大学が「提唱したメタボリックシンドローム」と「発見したアディポネクチン」の分子基盤の解明と医学応用

血糖が高いだけ、血圧が高いだけ、中性脂肪が高いだけ、HDL-コレステロールが低いだけなど、これらのパラメーターが異常を示していても「死」には直結しません。どうしてでしょうか?それは、これらをベースとして動脈硬化症が惹起され進展することで、最終的には「死」に至ります。そしてこれらの異常は、主として肥満とくに内臓脂肪蓄積に基づくものです。私たちは、「内臓脂肪と動脈硬化症」をキーワードに研究を進め、内臓脂肪と動脈硬化症を直接繋ぐ分子「アディポネクチン」を発見し、ヒトにおける意義そしてその機能解析を世界に先駆けて行ってきました。私たちのグループでは、「内臓脂肪症候群」・「メタボリックシンドローム」を提唱し、またその病態形成基盤の解明を目指して、基礎医学から臨床医学まで幅広く研究を行っています[1-19]。アディポネクチンを中心に、メタボリックシンドローム発症・進展に関わる様々な新規分子の同定や機能解析を行っています[20-23]。加えて、肥満脂肪組織の病態を解明すべく様々な側面より解析し、基礎と臨床をつなげる基盤的研究を行っています。これらを通じ脂肪組織からエネルギー代謝・動脈硬化、そして臓器障害へとつながる新しい「アディポサイエンス」分野研究を展開し、将来の医療貢献を目指しています[24,25]。

メタボリックシンドロームの病態生理学

日本人の糖尿病患者は、従来痩せている体型が多く見受けられていましたが、近年では欧米同様に肥満体型を呈する糖尿病患者が急増してきており、直近のデータでは、2型糖尿病患者の平均BMIはついに25を超えました。すなわち、日本人2型糖尿病患者の半数以上は肥満体型であることが示唆されます。このような状況において、私たちがこれまで臨床的・基礎的に明らかにしてきたメタボリックシンドロームの分子機構は極めて重要な位置付けになり、医療応用を目指していきたいと考えています。

【文献】

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