内科学

腎臓内科学

基礎研究と臨床研究の統合により、腎疾患患者の新規治療法開発と生命予後改善を目指す
  • 腎臓におけるオートファジーの役割:ベンチから実臨床へ
  • CKD-MBD:基礎と臨床両面から腎疾患と骨ミネラル代謝異常の密接な関連を紐解く
  • 腎疾患に関する大規模な疫学研究とその解析アプリの開発
教授 猪阪善隆
内科学講座 腎臓内科学
腎臓内科学教室は、昭和30年に阿部裕先生(本学名誉教授)が創設された第一内科腎臓研究室に端を発します。その後、平成17年に老年・腎臓内科学講座(荻原俊男教授)に統合されたのち、平成27年10月、創設60年目の節目に単独の講座として開講いたしました。医局は平成28年2月に現在の臨床研究棟2階に移転し、現在に至っています。

オートファジー、CKD-MBDを軸にした腎疾患の基礎研究・臨床研究から大規模疫学研究まで

1.

オートファジーは細胞内のタンパク質や器官を分解するための仕組みの一つで自食作用とも呼ばれます。腎尿細管はオートファジーが活発に起こる場所の一つです。私たちは遺伝子改変マウスを用いて、定常状態や種々のストレス下で、尿細管オートファジーが重要な役割を果たすことを証明してきました。最近では加齢や脂質代謝異常、糖尿病状態において、促進されるべきオートファジーが停滞してしまうことによって、腎病変の悪化を加速させていることも分かってきました。薬剤により、オートファジーの流れをスムーズにすることで腎疾患の治療が可能になるのではないかと考え、その臨床応用へ向けて日々研究を続けています。(図1)

2.

CKD (Chronic Kidney Disease; 慢性腎臓病)-MBD (Mineral and Bone Disorder) グループは、その概念が世界で確立される遙か以前より、カルシウム・リン代謝、血管石灰化をテーマに研究を行ってきました。当グループでは臨床研究で見つかった事象のメカニズムを基礎研究で明らかにするなど、基礎研究グループと臨床研究グループの緊密な連携に努めています。骨ミネラル代謝異常は腎疾患および腎不全関連疾患の病態形成・進行に深く関わっています。このため、当グループではCKD-MBDをベースに、腎疾患および腎不全関連疾患の病態解明を試みるとともに、その新規診断/治療法の開発を行っています。臨床研究グループは腎疾患統合医療学寄附講座と連携し、CKD全ステージを網羅した臨床研究を行っています。(図2)

3.

疫学グループは、本学保健センターと連携し、様々な施設と共同で、改善可能な生活習慣や薬物治療がCKDの発症・進行にどのような影響を及ぼしているかを、疫学的手法を用いて明らかにしています。数万~数十万人規模の職域・一般住民健診受診者、腎炎やネフローゼ症候群などのCKD患者コホートのデータを対象にしております。また大規模な疫学研究を容易に行うために、電子カルテから抽出した医療系ビッグデータを利用して、簡単にコホート研究用データシートを作成できるオンラインアプリを開発しています。さらに教育活動 「Clinical Journal Club」や「若手腎臓内科医のための臨床研究セミナー」等を通じて、疫学研究の教育活動も積極的に行っています。