情報統合医学

医療情報学

良質なリアルワールドデータの収集と、リアルワールドデータを使った知識獲得を目指して
  • ICTによる多施設共同研究データの効率的収集
  • Personal Health Recordによる健康・医療情報の連携とデータ二次利用
  • 自然言語処理技術によるデータ構造化
  • 医療データベースから機械学習手法を用いた知識獲得
  • 臨床意思決定支援システム
教授 武田理宏
教授 武田 理宏
情報統合医学講座 医療情報学教室
当研究室は1987年に開設され、初代:井上通敏教授、二代:武田裕教授、三代:松村泰志教授を経て、現在に至ります。当研究室の教官が附属病院医療情報部を併任し、阪大病院の病院情報システムを担当しています。良質な医療データベースの構築、機械学習手法による医学知識を獲得と臨床応用を目指して研究を行っています。

電子カルテ等からの医療データベースの構築と、その解析による知識獲得、さらに臨床医師決定支援システムの構築に向けて

医療情報学は、ICTを活用し、医学・医療に対して情報学的にアプローチする学問領域です。電子カルテ等から質の高いデータを収集し、医療情報データベースを構築し、このデータベースを用いた観察研究や機械学習により新たな医学知識を収集し、患者、医療者に還元することを目指し、研究を行っています。

我々は、大阪大学医学部附属病院が臨床研究中核病院として取り組む多施設臨床研究支援として、OCRネット(大阪臨床研究ネットワーク)協定医療機関の電子カルテと連携し、電子症例報告書、医用画像、臨床サンプルを効率的に収集する仕組み、レセプト、電子カルテデータを共通のSQLで収集する多施設共通データベースを構築してきました。

また、Personal Health Recordの一つである医療情報銀行の実証研究を行っています。医療情報銀行では、個人がスマートホン等を用いて、健診、診療・看護・介護情報や、自覚症状(Patient Reported Outcome)、Life Logなどを管理し、個人の意思に基づき情報を共有する仕組みを目指しています。患者さんと研究者が情報銀行を介してつながることで、研究課題ごとに個別同意(ダイナミックコンセント)を取得し、研究を行うことが可能となります。医療情報銀行には患者生涯のデータが収集されるため、単施設のデータでは明らかにできなかった新たな知見を得ることが可能となります。

我々は、機械学習手法を用いて、知識獲得に積極的に取り組んでいます。OCRネットでは、医用画像とそれに対応する臨床情報を大量に入手することができるため、深層学習による画像解析による自動診断や疾患予後予測などの研究を行うことが可能です。

また、自然言語処理技術を用いた情報抽出にも積極的に取り組んでいます。すでに、画像診断レポートの病変や部位情報などの情報抽出に成功し、OCRネット多施設共通データベースに組み込んで、臨床研究に活用しています。

さらに、医学教科書やインターネットから、疾患-症状関係の抽出に取り組んでいます。疾患-症状関係を用いると、診断支援システムを構築することが可能となります。医療ではエビデンスに基づく治療が展開されていますが、診断は医師個人の経験に頼っているのが現実です。診断支援システムにより、経験の少ない医師でも正しい診断を行うことができるようになります。

こうしたデータ解析が進み、新たな有用な知識が得られるようになりますと、これを、効果的に診療現場にフィードバックする方法が重要になってきます。我々は電子カルテを企画・運営しており、得られた知識を電子カルテに組み込む事で、医療者、患者に還元することを目指してまいります。

医療情報学の概念