社会医学

医の倫理と公共政策学

生命倫理・医学倫理~研究や医療の推進に伴う倫理的・法的・社会的課題に取り組む研究
  • 医学・生命科学研究の倫理的・法的・社会的課題の分析
  • 生命倫理・医学倫理にかかわる政策・研究現場のポリシーに関する研究
  • ゲノム医療実施に伴う倫理的・法的・社会的課題やポリシー策定に向けての取り組み
  • 臨床医療の倫理
教授 加藤和人
社会医学講座 医の倫理と公共政策学
当研究室は、大阪大学 大学院医学系研究科 分子治療学講座 「医の倫理学」教室(平成13年に発足)を継承する形で、平成24年より「医の倫理と公共政策学教室」へと改名し、現在に至っています。

ライフサイエンスと先端医療の歩みと営みを調べ、その意味や問題点について様々な人たちと共に考えていくことを目指す

医学・生命科学研究の発展、および高度な医療の発展は、社会の中で多くの人々に恩恵をもたらしています。その一方で、研究が社会に理解され、医療が信頼されて行われるためには、研究や医療に伴う倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Implications, ELSI)への取り組みが不可欠です。当研究室では、医学・生命科学・医療の発展に伴う課題を分析し、対応策・解決策を提案するための研究を行っています。

特に、これまでは、生命倫理というと科学・医療の発展を抑制する存在というイメージがあったかもしれませんが、私たちは現場の研究者医療者と、人文社会学系の専門家、および患者さんや市民との協働を促進することで、「ものごとを前に進める」ための活動を行うことを目指しています。

医学・生命科学研究の倫理的・法的・社会的課題の分析

超高速シークエンサーの登場により多くの人のゲノムが短時間・低コストで解読できるようになっています。iPS細胞、ES細胞などの幹細胞が、再生医療をはじめとする新しい医療や医学研究の発展に役立つとして注目を浴びています。そうした研究を行う際に、そのような課題があるのか、研究現場と密接に関わりながら、調査分析を行っています。

生命倫理・医学倫理にかかわる政策・研究現場のポリシーに関する研究

倫理的・法的・社会的課題に対して、具体的な取り組みを行うためには、研究現場および政府レベルのポリシーが必要です。政府ガイドラインの内容、あるいは策定のための体制について調査分析を行っています。

ゲノム医療実施に伴う倫理的・法的・社会的課題やポリシー策定に向けての取り組み

ゲノム情報を用いた個別化医療をの推進する際に生じる倫理的・法的・社会的課題、特に「偶発的所見(*1)との適切な向き合い方について研究しています。具体的にはそういった向き合い方の基本的な枠組みとそれが正当化できる根拠について取りまとめ、患者さんに返す場合の条件や具体的な方策を検討することに取り組んでいます。そして、その成果をもとに、日本における偶発的所見への対応に向けた提案を行うことを目指しています。

*1 ゲノム解析を行う過程で偶然見つかる、提供者や血縁者の生命に重大な影響を与える疾患の所見

臨床医療の倫理

「医の倫理学」教室(当教室の前身、2001年~)の発足以来、取り組んできた臨床医療の倫理に関する課題にも取り組んでいます。これまでの大学院生のテーマには、生殖補助医療、アドバンス・ディレクティブ、終末期ケア、スピリチュアルケアなどがあります。