社会医学

公衆衛生学

複雑化する健康問題の「上流」にある成因に挑む
  • 複雑化する健康問題の「上流」にある成因に挑む
  • 個人、集団、環境の多層的な視点で健康問題に取り組む
  • 多様で学際的な研究で、社会と医学の接点においてチームとして未来の健康を提案する
教授 川崎良
社会医学講座 公衆衛生学
当研究室の源流は初代教授関悌四郎先生に遡ります。わが国の衛生状態の改善、急性感染症の低下、生活習慣病の増加と変遷に伴い、公衆衛生学の対象とする疾病も変化してきました。現在は循環器疾患をはじめとする生活習慣病の予防活動、疫学研究と、その世界展開に取り組んでいます。

複雑化する健康問題の「上流」にある成因に挑む

公衆衛生学の根幹とも言えるのが、疾病の成因の理解を深め、より上流から介入する予防衛生対策を考えることである。この目標を達成するためには、まだ疾病を発症していない集団を対象にしたコホート研究の手法で記述疫学、分析疫学の知見を蓄積し、そこからより上流へ、より大きな集団への介入を試み、検証するアプローチが重要となる。公衆衛生学では長い歴史を経て継続されてきた住民対象コホート研究を継続し、複雑化する疾病、健康課題に対してヘルスプロモーションから続く一次予防・二次予防・三次予防を実現すべく、疫学手法を駆使して取り組んでいく。

個人、集団、環境の多層的な視点で健康問題に取り組む

公衆衛生学の醍醐味は病院という枠にとらわれず、個人レベルでの健康から地域・社会・国の集団レベルでの健康、さらには気候変動や環境を地球規模で俯瞰する環境レベルでの健康までを俯瞰する視点を持ち得ることにある。個人、集団レベルの健康においては、高度化する医学と多様化する価値観を背景に、従来の「病院での医療」、「地域・職域での健康づくり」という枠組みには収まらないアプローチも求められていく。デジタルネイティブ世代の新しいコミュニティ、デジタル・ネイバーフッドなど従来の公衆衛生活動で行き届かなかった集団へのアプローチの提案などはその一案になる。また、個人レベルでの疾病リスク理解を精緻化する精密医療・精密予防と同時に、地球規模での環境や文化に配慮した健康づくりの提案といった持続可能で多彩な健康のあり方を提案していく。

多様で学際的な研究で、社会と医学の接点においてチームとして未来の健康を提案する

公衆衛生学は、人間を社会や環境との関わりの中で捉えつつ、多様な健康課題に対して必ずしも原因や機序がわからない状況であっても対処してきた実践科学である。大阪大学公衆衛生学教室にはそれぞれの時代の医療課題に対処し、日本の公衆衛生を牽引してきた業績がある。検診部門、疫学研究部門を持ったメディカルセンター、国民健康づくり運動から特定健康診査に至る世界に類のない国をあげての健診制度など、わが国の寿命延伸の基礎を築いてきた。一方で、長寿が達成された我が国において、寿命と健康寿命のギャップ、少子化の加速、新興感染症、社会格差など新たな健康課題が立ちはだかっている。社会の変化、価値観の多様化を背景に従来のアプローチだけでは対応できず、未来の健康を提案する次の時代の公衆衛生の在り方が求められている。未来の健康を提案するために、多様で学際的な研究チームで健康を考え、未来の健康を提案するために集う「場」を提供したいと考えている。