薬理学

環境応答薬理学

神経と免疫をつなぐ分子機構を解き明かし、次世代の治療薬へ
  • 交感神経による免疫制御機構の解明
  • 神経−免疫連関の新たな様式の同定
  • リンパ球動態を標的とした創薬研究の推進
  • 神経−免疫連関の制御に基づく新規治療薬の開発
教授 鈴木 一博
薬理学講座 環境応答薬理学
薬理学講座は、大阪帝国大学時代の昭和6年に長崎仙太郎先生を初代教授として創設され、昭和12年に薬理学第一講座と第二講座の二講座体制となりました。薬理学第一講座は岡川正之教授、今泉禮治教授による両講座兼任の時期を経て、吉田博教授、三木直正教授、金井好克教授が担当されました。令和8年より鈴木一博が引き継ぎ、教室名を環境応答薬理学に改めて現在に至ります。

神経−免疫連関の細胞・分子基盤の解明と新規治療薬の開発

神経系と免疫系は、外的・内的環境への応答を担う二大生体システムです。「病は気から」といったことわざにも示されるように、神経系と免疫系が互いに影響を及ぼし合っていることは古くから知られていました。しかし、その詳細なメカニズムはいまだ十分には理解されていません。そこで私達は、神経系と免疫系の機能的な相互作用(神経−免疫連関)のメカニズムを細胞・分子レベルで解明することを目的として研究を行っています。これまでの研究において、交感神経がリンパ球の体内動態を制御する分子機構を明らかにしました(図1)。さらに、この仕組みが免疫応答の日内変動を生み出していることも示しました。近年、神経−免疫連関は、生命科学における古くて新しい研究領域として注目され、世界的に活発に研究が行われています。一方、その細胞・分子基盤については、未解明な点が数多く残されています。私達の研究室では、交感神経による免疫制御機構をさらに追究するとともに、神経−免疫連関の新たな様式を見出すことを目指して研究を進めています。


図1.交感神経によるリンパ球動態の制御

私達は、交感神経によるリンパ球動態制御の分子機構を解明する過程で、免疫細胞の移動を司る走化性因子受容体のシグナル伝達因子として、COMMD3およびCOMMD8を構成要素とするタンパク複合体(COMMD3/8複合体)を同定しました(図2)。これまでに、COMMD3/8複合体がリンパ球の移動および免疫応答の成立に重要な役割を果たすこと、さらに同複合体が免疫疾患の病態に深く関与することを明らかにしてきました。現在、私達はCOMMD3/8複合体を標的とした免疫疾患治療薬の開発を進めています。今後は、神経−免疫連関の分子機構の研究を通じて新たに同定される分子を標的とし、神経−免疫連関の制御に基づく新規治療薬の開発にも取り組んでいきます。


図2.COMMD3/8複合体の機能解明