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    ~B細胞の移動がその生成を促すことを解明~

白井 太一朗、鈴木 一博≪環境応答薬理学≫ 自己免疫疾患を引き起こす新たな病原性B細胞を発見
~B細胞の移動がその生成を促すことを解明~

2026年7月21日
掲載誌 The Journal of Clinical Investigation

図1.病原性 B 細胞の⽣成メカニズム
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研究成果のポイント

  • 自己免疫疾患を引き起こす新たな病原性B細胞を発見
  • B細胞がリンパ組織の特定の場所に移動することで病原性B細胞が生成されることを解明
  • B細胞の移動を標的とした自己免疫疾患の新たな治療法の開発に期待

概要

 大阪大学大学院医学系研究科の鈴木一博教授、白井太一朗助教らの研究グループは、自己免疫疾患を引き起こす新たな病原性B細胞を発見し、B細胞がリンパ組織の特定の場所に移動することで病原性B細胞が生成されることを明らかにしました。

 自己免疫疾患では、B細胞から分化した抗体産生細胞が自己抗体を産生することで、臓器の慢性的な炎症や機能障害が引き起こされます。しかし、どのようにして病原性B細胞が生成され、自己抗体を産生する細胞へと分化するのかは十分にわかっていませんでした。

 今回、研究グループは、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)※1の患者とモデルマウスから採取したB細胞を解析することにより、新たな病原性B細胞を同定しました。また、B細胞がリンパ組織の特定の場所に移動することで、この病原性B細胞が生成されることを明らかにしました。さらに、B細胞の移動を阻害し、病原性B細胞の生成を抑制することで、モデルマウスにおける自己抗体の産生が減少し、病態が改善されました。これらの結果から、B細胞の移動を標的とした自己免疫疾患の新たな治療戦略の可能性が示されました(図1)。

 本研究成果は、米国科学誌「The Journal of Clinical Investigation」に、7月15日(水)午前1時(日本時間)に公開されます。

研究者のコメント

<鈴木教授のコメント>
 私達はこれまで免疫細胞の移動が制御される仕組みを研究してきました。今回、その知見を基盤として、B細胞の移動が自己免疫疾患における病原性B細胞の生成に重要な役割を果たしていることを明らかにできました。今後は、細胞の移動と配置が病気の発症や進行を左右するという視点から、自己免疫疾患に対する新しい治療法の開発を目指します。

研究の背景

 SLEなどの自己免疫疾患では、本来は体を守る働きを担うB細胞から分化した抗体産生細胞が、自分自身を攻撃する自己抗体を産生することで、様々な臓器に慢性的な炎症や機能障害を引き起こします。このため、自己抗体を産生する抗体産生細胞は自己免疫疾患の病態を担う重要な細胞と考えられています。

 近年、抗体産生細胞へと分化する前段階のB細胞として、加齢随伴B細胞(age-associated B cell, ABC)※2が注目されています。しかし、ABCの中でもどの細胞が病原性B細胞となり、自己抗体を産生する抗体産生細胞へと分化するのか、また、その過程がどのように制御されているのかはわかっていませんでした。

 研究グループは、これまで免疫細胞が体内を移動し、適切な場所へ配置される仕組みについて研究を進めてきました。そこで今回、B細胞の移動に着目し、病原性B細胞がどのように生成されるのかを明らかにすることを目指しました。

研究の内容

 研究グループは、SLE患者およびモデルマウスから採取したB細胞を解析し、ABCの中から、自己抗体を産生する抗体産生細胞の前駆細胞となる新たな病原性B細胞を発見しました(図2A)。この病原性B細胞は患者の末梢血中で増加しており、その数が疾患活動性や自己抗体の量と相関することから、自己免疫疾患の病態に深く関与していることが示唆されました(図2B)。

 さらに、B細胞がリンパ組織の特定の場所(濾胞外ニッチ)へ移動することで、この病原性B細胞が生成されることを明らかにしました。すなわち、B細胞の移動は単に細胞の位置を変えるだけではなく、病原性B細胞の生成を促す重要な役割を果たしていることが示されました。また、B細胞の移動を制御するCOMMD3/8(コムディー・スリー・エイト)複合体※3が、この病原性B細胞の生成に必要であることも明らかにしました。

 SLEモデルマウスにおいてCOMMD3/8複合体を欠損させると、病原性B細胞の生成が抑制されるのに伴い、自己抗体の産生が減少し、病態が改善されました(図2CおよびD)。これらの結果から、B細胞の移動を標的とすることが、自己免疫疾患に対する新たな治療戦略となる可能性が示されました。

図2.病原性B細胞の同定とB細胞の移動を標的とした自己免疫疾患治療の可能性.
(A)SLE患者の末梢血における病原性B細胞の存在.病原性B細胞(赤色)の集団を矢印で示す.(B)SLE患者の末梢血における病原性B細胞の割合と疾患活動性指数の相関.(CおよびD)SLEモデルマウスにおけるCOMMD3/8複合体の欠損が自己抗体の産生(C)および腎臓の炎症(D)に及ぼす影響.
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本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

 現在、自己免疫疾患の治療では、免疫機能を全般的に抑制したり、全てのB細胞を除去したりする薬剤が用いられていますが、感染症などの副作用が問題となることがあります。本研究では、自己免疫疾患を引き起こす病原性B細胞が生成される仕組みを明らかにするとともに、その生成を抑えることで病態を改善できる可能性を示しました。今後、病原性B細胞の生成を選択的に制御する方法の開発につながれば、より効果的で副作用の少ない自己免疫疾患治療の実現が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2026年7月15日(水)午前1時(日本時間)に米国科学誌「The Journal of Clinical Investigation」(オンライン)に掲載されます。

【タイトル】

“Migration-dependent extrafollicular programming of pre-plasmablast age-associated B cells drives lupus pathogenesis”

【著者名】

Taiichiro Shirai, Kentaro Kuzuya, Mizuki Kishi, Shinya Ichikawa, Shuhei Sakakibara, Akiko Nakai, Sarah Leach, Yu-Chen Liu, Daisuke Motooka, Daisuke Okuzaki, Masashi Narazaki, Atsushi Kumanogoh, Tomohiro Kurosaki, Jun Saegusa, and Kazuhiro Suzuki

DOI:https://doi.org/10.1172/JCI204095

 本研究は、AMED革新的先端研究開発支援事業ステップタイプ(FORCE)、JSTムーンショット型研究開発事業、化学及血清療法研究所研究助成の一環として、神戸大学大学院医学研究科 三枝淳准教授の協力を得て行われました。

用語説明

※1  全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)
免疫の異常により、自分自身の体を攻撃する自己抗体が作られ、全身の様々な臓器に炎症や障害を引き起こす代表的な自己免疫疾患。

※2 加齢随伴B細胞(age-associated B cell, ABC)
加齢や慢性的な炎症などで増加するB細胞の一種。自己免疫疾患との関連が注目されている。

※3 COMMD3/8(コムディー・スリー・エイト)複合体
COMMD3とCOMMD8からなるタンパク質複合体。走化性因子受容体を介したB細胞の移動を制御する。

 

【参考URL】

鈴木 一博 教授 (環境応答薬理学)
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/e49b4955d9ed00f4.html