2026年

藤森 孝人≪整形外科学≫ AIが側わん症のレントゲンを0.1秒で計測
~専門医に近い精度で、診療時の計測作業を大幅に短縮~

2026年9月8日

掲載誌 npj Digital Medicine


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研究成果のポイント

  • 側わん症のレントゲン画像から、専門医の手動計測に近い精度で、背骨の曲がりや傾きを最速0.1秒で自動計測するAIを開発
  • 成長期に背骨が左右に曲がり変形が進むことがある側わん症において、従来の診療では、進行を評価するための画像計測に時間を要するうえ、計測者によって結果にばらつきがあった
  • 計測作業の短縮により医師は患者への説明や治療方針の検討により多くの時間を使えること、また長期間の経過観察や多施設共同研究のためのデータ精度向上にも役立つことが期待される

概要

 大阪大学大学院医学系研究科の藤森孝人講師らの研究グループは、側わん症のレントゲン画像から、背骨の曲がりや傾きを自動で計測するAIを開発しました。AIは、手術後の画像に写るスクリューやフックなどの金属器具も自動で検出できます。

 側わん症は、成長期に背骨が左右に曲がり、変形が進むことがある病気です。診療では、病気の進行を評価するために、レントゲン画像上で多くの角度や距離を計測します。従来は医師が一つずつ手作業で計測しており、1枚あたり約3~5分を要するうえ、計測者によって結果がばらつくことが課題でした。

 研究グループは、米国と日本の10施設から集めた約4,600枚のレントゲン画像を用いてAIを開発・検証しました。その結果、背骨の最も大きな曲がりを示す角度の平均誤差は2.7°で、専門医の手動計測に近い精度を示しました。計測時間は1枚あたり最速0.1秒でした。

  このAIを用いることで、計測の時間短縮や計測者による結果のばらつきを抑えやすくすることが期待されます。今後は、臨床現場で使いやすいシステムへの改良と実用化を目指します。

 本研究成果は、国際科学誌「npj Digital Medicine」に、7月17日(金)に公開されました。

研究者のコメント

<藤森孝人講師のコメント>
側わん症の診療では、背骨の状態を正確に評価するため、多くの項目を計測する必要があり、医師にとって負担となっています。今回、国内外の多施設から世界最多規模で集めた画像を用いることで、さまざまな症例に対応できるAIを開発しました。大阪大学が強みとする医工連携のもと、医師と画像工学の研究者が緊密に協力することで、本成果を実現しました。今後は、臨床現場でより使いやすいシステムへと改良し、医師の負担軽減と、施設や担当者によるばらつきの少ない、より均一な診療につなげたいと考えています。

研究の背景

 側わん症は、成長期に背骨が左右に曲がり、変形が進むことがある病気です。進行の程度を正しく把握するには、レントゲン画像上でCobb角※1をはじめ、多くの角度や距離を計測する必要があります。現在はデジタル画像上での計測が一般的ですが、多数の指標を一つずつ設定する必要があり、依然として医師の負担となっています。また、手動計測では計測者によって3~8°程度の差が生じることがあり、同じ基準で評価しにくいことも課題でした。

研究の内容

 研究グループは、画像認識を得意とするAI(畳み込みニューラルネットワーク(CNN)※2)を用いて、正面および側面のレントゲン画像から、背骨、鎖骨、骨盤、大腿骨の位置を自動で特定しました。さらに、特定したこれらの位置情報から、側わん症の評価に必要な角度や距離を自動計算します。また、手術後の画像に写るインプラント(スクリュー、フック)※3の位置と本数も自動で検出します。

 外部検証では、主カーブ(最も大きい曲がり)のCobb角の平均誤差は2.7°(相関係数r=0.99)、胸椎後弯は3.7°(r=0.91)でした。椎体の番号付け(移行椎※4の認識)の正確度は0.97でした。インプラント本数の平均誤差は1画像あたり0.18本(r=0.99)でした。

 AIの開発には、米国7施設と日本2施設の計9施設から集めた1,471人、4,043枚の画像を用い、これらとは別の米国1施設の177人、542枚の画像で性能を検証しました。また、JPG、PNG、DICOMなどの画像をドラッグ&ドロップするだけで計測できるアプリケーションも開発しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

 このAIを用いることで、診察時に複数の計測値を短時間で確認でき、医師は患者への説明や治療方針の検討に、より多くの時間を使えるようになると期待されます。また、計測者による結果のばらつきを抑えやすくなるため、長期間の経過観察や、多施設共同研究のデータ精度向上にも役立つと考えられます。今後、臨床現場で使いやすいシステムへの改良と実用化を目指します。

特記事項

本研究成果は、2026年7月17日(金)に国際科学誌「npj Digital Medicine」(オンライン)に掲載されました。

【タイトル】

“Deep Learning–Based Automatic Measurement of Spinal Alignment and Implant Detection in Scoliosis Radiographs”

【著者名】

Nozomu Nakajima, Yuki Suzuki, Koki Hosozawa, Koki Kishimoto, Kosuke Kita, Yuya Kanie, Masayuki Furuya, Kei Shinyashiki, Yuichiro Ukon, Shota Takenaka, Takashi Kaito, Noriaki Yokogawa, Masatoshi Hori, Seiji Okada and Takahito Fujimori

DOI:https://doi.org/10.1038/s41746-026-03020-7

用語説明

※1  Cobb角
レントゲン画像上で背骨の曲がりの大きさを表す角度。側わん症の重症度を評価する最も標準的な指標。

※2 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
画像認識を得意とするAI学習の一手法。医療画像の解析にも広く用いられている。

※3 インプラント(スクリュー、フック)
側わん症の矯正手術で、背骨を固定するために用いる金属器具。

※4 移行椎
腰椎と仙骨の境目などで、椎骨の数や形に個人差がある状態。椎骨の数え方に影響し、計測を難しくすることがある。

【 SDGs目標】

【参考URL】

藤森孝人 講師 (整形外科学)
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/245e592955ab2c6a.html
https://researchmap.jp/fujimori_takahito

本研究で開発したAIのデモンストレーション動画(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=5nep1cdXV1o (英語)
https://www.youtube.com/watch?v=w4nhKjV942g (日本語)