2011年

 

山本 雅裕、竹田 潔≪免疫制御学≫ 「トキソプラズマ症発病の決定的病原性因子ROP18の作用機序の解明」

免疫制御学-1

免疫制御学-2
クリックで拡大表示します

2011年6月13日 発表
掲載誌The Journal of Experimental Medicine  208:1533-1546 (2011)

トキソプラズマ症発病の決定的病原性因子ROP18の作用機序の解明

トキソプラズマ症はエイズ患者や抗がん剤を多用する癌患者など免疫抑制状態にある人間や動物で脳症がおこり、重篤な神経症状を引き起こす大変死亡率の高い人畜共通寄生虫病です。トキソプラズマ症を引き起こすトキソプラズマ原虫は、世界人口の約3分の1が感染しているとされ、健常人ではさほど問題ないものの妊婦が初めて感染した際には胎児の流産や新生児の先天性水頭症を引き起こすこともある、予後が大変悪い重要病原体です。寄生虫が感染すると人間や動物などの宿主では免疫システムによる排除機構が作動しますが、病原性の高いトキソプラズマ原虫感染では宿主免疫系が抑制されトキソプラズマ症が発症することが近年わかってきました。しかし、その高病原性トキソプラズマ原虫による宿主免疫抑制機構の具体的なメカニズムは不明のままでした。
今回本研究グループはトキソプラズマ症のマウス実験モデルを用いることにより、高病原性トキソプラズマ原虫が分泌する病原性因子ROP18が急性トキソプラズマ症発病の際の免疫抑制反応に重要であることを発見しました。そのメカニズムとして、ROP18が宿主感染細胞に打ち込まれ、宿主のストレスセンサーの一つであるATF6βを分解し機能不全に陥れることで、寄生虫排除に必要なⅠ型免疫応答を抑制することを見出しました。この発見は、ROP18の機能を人為的に操作することで、トキソプラズマ症に対する新たな治療法の開発に繋がる成果として期待され、米国医学雑誌Journal of Experimental Medicine誌に掲載されました。また、本研究論文の内容が掲載紙の表紙カバーに選ばれました。

URLhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ongene/

免疫制御学