2011年

 

岩井 一宏≪医化学≫ 「慢性皮膚炎・免疫異常に関わるシグナル伝達機構の解明」




クリックで拡大表示します

2011年3月31日 発表
掲載誌Nature 471:633-636(2011)

慢性皮膚炎・免疫異常に関わるシグナル伝達機構の解明

NF-kBは種々の刺激によって活性化されて免疫応答、炎症、抗アポトーシス作用などの多彩な作用を発揮する転写因子であり、その活性調節異常が皮膚炎、ガンを含め幾多の疾患に関与していることが知られています。本研究チームは刺激に応答してNF-kBの活性化を導く新たな刺激伝達系として、直鎖状ポリユビキチン鎖と呼ばれる従来全く知られていなかったタンパク質修飾系が関与することを一昨年Nature Cell Biology誌に発表しておりました。
今回、直鎖状ポリユビキチン鎖を選択的に生成するLUBACユビキチンリガーゼ複合体の新規構成成分としてSHARPINを同定しました。その構成成分が慢性皮膚炎、種々の免疫異常、関節炎などの多彩な症状を呈する自然変異マウスの責任遺伝子であることを示されていましたが、同マウスが多彩な症状を示す理由は不明でした。本研究チームはSHARPINが欠損することで刺激依存的なNF-kBの活性化が減弱されているために上記の多彩な症状を呈していることを示しました。
今回の報告の結果は、直鎖状ポリユビキチン鎖の生成を制御することで、慢性皮膚炎や免疫異常が関与する疾患に対する治療法が開発できる可能性を強く示唆していると考えられます。

URLhttp://www.cellbio.med.osaka-u.ac.jp/