2011年

 

村松 里衣子、山下 俊英≪分子神経科学≫ 「RGMaはT細胞活性化を制御し、自己免疫性脳脊髄炎に関与する」

分子神経科学
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2011年3月21日 発表
掲載誌 Nature Medicine 17, 488-494(2011)

RGMaはT細胞活性化を制御し、自己免疫性脳脊髄炎に関与する

多発性硬化症は、脳や脊髄、視神経などに炎症が生じ、重篤な神経症状をきたす神経難病であり、免疫系の異常、特に、抗原提示細胞によるT細胞の活性化に異常があると考えられている。一方、RGMたんぱく質は発生の途上で神経の回路形成を制御するたんぱく質として知られている。我々は、RGMaが樹状細胞に発現しており、CD4+ T細胞にその受容体neogeninが発現していることを見いだした。CD4+ T細胞をRGMaで刺激すると、細胞内でRap1が活性化し、ICAM-1への接着が強まった。多発性硬化症に類似する脳脊髄炎を発症するマウスを作製し、RGMaの機能を中和する抗体を投与すると、脳脊髄炎による症状が抑制された。この中和抗体の効果は、樹状細胞に発現するRGMに結合することで、T細胞の活性化を抑えるためであった。また多発性硬化症は脳脊髄炎の再発を繰り返す難病であるが、このRGM中和抗体は脳脊髄炎の再発を抑制する効果も持っていた。さらに我々は、多発性硬化症患者から採取した血液を用いて解析を進めた。その結果、RGM中和抗体は、末梢血中のT細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制した。これらの結果より、RGM中和抗体は、T細胞の活性化を防ぎ、脳脊髄炎に特徴的な炎症性サイトカインの産生を抑制することで、自己免疫性脳脊髄炎の発症と再発を防止する効果をもつことが明らかになった。今回の研究成果は、RGM中和抗体が多発性硬化症の治療薬として有望であることを示したものである。

URLhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/

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