佐々木 勉、北川 一夫≪神経内科学≫ 「SIK2(塩誘導性キナーぜ2)は、脳虚血に際してCREB-TORC1経路を介して神経細胞障害を制御する」
2011年1月13日 発表
掲載誌 Neuron 69(1):106-19(2011)
SIK2(塩誘導性キナーぜ2)は、脳虚血に際してCREB-TORC1経路を介して神経細胞障害を制御する
転写因子CREB(cAMP responsive element-binding protein)は、脳内に豊富に発現し、記憶、神経可塑性、細胞生存など幅広い神経機能、或いは病態に関与する。今回我々は、SIK2、CREB-specific coactivator transducer of regulated CREB activity 1(TORC1/CRTC1)が神経細胞に豊富に発現し、脳虚血時にはCa2+/calmodulin-dependent protein kinase(CaMK)1/4 の活性化により、SIK2が分解され、TORC1-CREBを介して下流の神経保護因子の発現を誘導する新規シグナル経路を世界で初めて報告した。又、脳虚血時神経細胞においてはNMDA受容体を介したCa2+流入が重要であるが、とりわけNMDA NR2Aサブタイプ、シナプス刺激時の内因性保護シグナルに関与する経路であることを示した。また、SIK2遺伝子欠損マウスでの、神経細胞生存促進効果、脳梗塞サイズの縮小を認めた。今回の成果は、SIK2,TORC1を標的とした治療が、脳梗塞のみならず、認知症などを含めた神経変性疾患に対して有効な治療法に繋がりうるものである。