寄附講座

運動器医工学治療学

股関節の解剖とバイオメカ研究に基づく人工関節およびコンピュータ外科システムの開発
  • 複合材を用いた骨接合デバイスおよび人工関節開発
  • 特発性大腿骨頭壊死症の疫学研究および診療ガイドライン策定
  • 股関節疾患の病因病態研究
  • 人工関節材料の体内変化分析
  • コンピュータ支援手術システムの開発と臨床応用

 

 

最先端の医学~工学技術を融合し、新素材による骨接合材や人工関節、次世代コンピュータ支援手術システムを開発

各種関節疾患や骨折などの外傷で損傷し、機能を失った関節の痛みをとり、安定性と運動性を早期に回復させる手術治療は、超高齢社会において、健康寿命をのばすための重要な役割を担っています。特に、大腿骨近位部骨折や股関節症を始めとする慢性股関節疾患は、移動能力を低下させ、適切な治療がなされないとロコモティブシンドローム(運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態)に至る危険性の高い傷害および疾患群です。大腿骨近位部骨折はタイプによって、骨接合術または人工関節置換術が適応され、早期に歩行を回復させることが可能ですが、骨接合術に用いる内固定材を更に改良すべく、生体親和性および強度に優れた炭素繊維強化樹脂(Carbon fiber reinforced PEEK)で骨折内固定デバイス開発しています(写真1)。

写真1

人工関節は、従来は長期耐用のために日常生活での動作制限や若年者への適応制限を行っていましたが、材料やデザイン技術の改良が進み、より活動的に生活しても長期耐用が可能なものが開発されつつあります。特に関節摺動(しゅうどう)部の材料やデザインは、この活動性を維持しながら長期耐用できる最も重要な鍵です。これまで、金属学、ポリマー化学、セラミックス化学、ナノテクノロジーなど様々な領域で材料の研究がなされてきましたが、実際の生体内での動態や物性変化の分析、手術手法の影響など臨床医学と連携した基礎研究の必要性が高く、それにより今後さらに高性能な人工関節の開発が可能になると思われます。さらに、これら新素材を有効かつ安全に臨床使用するためには、ナビゲーション(写真2)やロボティックスシステムを用いたコンピュータ支援外科技術の新たな開発が必要です。当研究室では、最先端の医学/工学技術を融合し、新素材による骨接合材を開発するなど、関節再建法の知見を深め、高機能で長寿命な次世代人工関節およびコンピュータ支援手術システム開発を目指した研究を行っています。

写真2