2010年

 

原口 直紹、土岐 祐一郎、森 正樹≪消化器外科学≫ 「CD13は肝臓癌幹細胞の治療標的分子である」

消化器外科学
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2010年8月9日 発表
掲載誌 J CLIN INVEST 120(9):3326-39 (2010)

CD13は肝臓癌幹細胞の治療標的分子である

癌幹細胞は癌を構成する細胞階層の基盤となる細胞であり、癌細胞を生み出す基となる細胞である。癌幹細胞は、細胞周期が遅く、抗癌剤や放射線治療に耐性を有し、癌の再発・伸展に重要な役割を果たしている。そのため、癌の根治に向けては、癌幹細胞を標的とした治療法の開発が必要であると考えられている。われわれは、肝臓癌において、肝臓癌幹細胞を分離する新規の機能性マーカーであるCD13を同定し、同マーカー陽性細胞が高い腫瘍形成能と自己複製能を有することを見出した。CD13陽性細胞は細胞周期が静止した状態(G0期)に主に存在しており、多剤耐性を示す分画であるSP(side population)分画と密接に相関し、高い抗癌剤耐性、放射線耐性能を有していた。CD13は、過酸化物質(Reactive oxygen species; ROS)の排泄をつかさどるグルタチオンパスウェイの酵素としての機能を有している。CD13の抑制は細胞内のROSを上昇させ癌幹細胞のアポトーシスを誘導する。マウス担癌モデルにおいて、CD13阻害剤に加え、ROSを誘導する抗癌剤を投与することにより、著明に高い抗腫瘍効果が認められた。また、CD13の抑制により癌幹細胞の自己複製能が阻害され、造腫瘍能が消失することを見出した。これらのことにより、CD13の制御が肝臓癌の癌幹細胞を標的とした、癌の根治につながる、新しい治療法としての有用性が期待される。

URLhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gesurg/

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