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末梢血管治療

助教(卒後教育開発センター)
三宅 啓介

末梢血管と言えば、頭の先から内臓や足の先まで全身に存在すると思います。どこの血管も治療対象になるでしょうか。

末梢血管では頸部、腹部、上肢、下肢の動脈・静脈疾患全般を扱っていますので、頭の中、胸の中を除くほぼ全ての血管系を扱う分野になります。

事故や外傷による足の切断や指の切断の際は末梢血管外科の先生に治療していただけますでしょうか

私たちは、微小な血管も扱いますし、足や指の切断という治療も実施します。一方で、外傷等で切断されてしまった指等の再建については、神経の縫合等が必要となり、整形外科あるいは形成外科の手、足の専門医を受診する必要があります。

カテーテル治療の台頭が著しい昨今ですが、外科的治療の強みを教えてください

あらゆる外科領域において、時代とともに古典的な侵襲的外科的手術は徐々に減少し、テクノロジーの進歩により内視鏡治療、経カテーテル治療、鏡視下手術、ロボット手術と患者さんの負担が少ない低侵襲治療は増加しております。この流れは、患者さんにとっても我々医療者にとっても望ましいものです。痛みが少なく同様の治療効果をもたらすことができることは歓迎すべき進歩です。
血管外科領域においては、この10−20年でカテーテル治療が台頭してきました。習熟とともに外科的手術に比べて短時間で治療を行えることは非常に大きなインパクトを与えました。一方で、これまでの期間でテクノロジーの進歩にも関わらず、カテーテル治療の限界、問題点も明らかとなってきています。最近では、いくつかの疾患群において、カテーテル治療を実施した患者さんに比べて外科手術を実施した患者さんのほうが長生きするというデータが、臨床医学領域で最も権威のある信頼度の高い医学誌に掲載されるに至っています。
結局の所、どの治療法も完璧なものはなく、適切に使い分けること、個々の患者さんに応じて最適な治療法を提案するということが求められていると感じています。私達は、カテーテル治療、外科的手術どちらも実施することが可能ですので、患者さんに最適な治療を提供しやすい立場にあると感じておりますので、お気軽に相談していただければと思います。
また、当然ながら、現状の治療はカテーテル、手術とも完璧ではなく改善の余地が多いことも事実であり、今尚救うことが困難な患者さんは数多くいらっしゃいます。私達は、そうした患者さんの苦しみを減らすこと、無くすことを目指し、新しい治療法の探索・開発を日々懸命に行っております。そうした治療法をいち早くお届けできるようにしていきたいと思っております。

末梢血管外科という診療科としてのアピールポイントはなんですか

私どものアピールポイントは血管のスペシャリストである点です。血管外科は存在しますが、血管内科は存在しません。すなわち、”外科”と名前がついていますが、手術のみを行うわけではなく、いわゆる内科的な診断、内服・理学療法といった保存的な加療、カテーテル治療および外科的な治療のすべてを行う科となっています。そうした診療を可能とするために、多くの手術・カテーテル治療に関する修練を行ってきたことはもちろんとして、超音波検査や種々の検査法を用いた診断学、加えて、生活習慣の血管に及ぼす影響、血管の病態・生理学といった幅広い知識を習得しています。
血管疾患に苦しむ患者さんは、様々な背景、様々な症状・病態を抱えていることが知られています。手術といった体に負担をかける治療法のみではなく、カテーテル治療、保存的治療・理学療法も含めて患者さんにベストな治療法を提供したいと考えておりますし、また実現可能な体制を有していると考えております。

末梢血管の病気は全身の病とよく聞きますが、他の疾患との関連性などはやはり非常に高いと考えられますか

血管は全身の至るところに存在し、どの臓器にも存在します。血管に病気が発生することはまさに全身の至るところが蝕まれているということを意味し、それこそが現代の非常に大きな問題である”動脈硬化”だと考えられます。末梢血管に病気をもつということは、動脈硬化の進行、つまり心臓・脳に対しても大きなリスクを持つことを意味し、全身の疾患の検索が命を守る上で非常に重要です。当科では診療科全体として、血管はもちろん、心臓、首の血管等も診療・治療が行える体制を有しておりますので、安心して受診いただければと思います。
また、血管外科で扱う病気の一つに閉塞性動脈硬化症があります。これは、足の血流を低下させることで、患者さんの歩行能力を著しく低下させる疾患です。歩行は人間の生命維持に極めて重要な活動であり、歩行距離と種々の全身疾患、余命の関係性が明らかとなりつつあります。我々は、患者さんの歩行を守ることで、健康に長く生きることができるように全力で診療にあたりたいと考えております。