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バイオデザイン

特任助教
桝田 浩禎

バイオデザインとはどのようなものでしょうか?

医療機器開発に特化した人材を10ヶ月かけて育てる組織です。既存の医療機器を少し改良するのではなく、デザイン思考(ニーズ起点の課題解決法)を用いて新たな価値のある革新的な医療機器を開発します。何のアイデアもないゼロから始まって、10ヶ月後には特許を出願し、最終的には起業して社会実装するところまでを目標としています。もともとはデザイン思考のメッカであるスタンフォード大学で生まれた組織であり、世界中でバイオデザインの手法が取り入れられています。現に世界の大手外資医療機器メーカーでも本手法が取り入れられています。

先生がバイオデザインをやろうと思ったきっかけはなんですか?

最終的な決め手になったのは、先代教授の澤先生にお声がけいただいたことです。 昔から何か人と違うことや新しいことにチャレンジしてみたいという思いは強い方だったと思います。医師になりたての頃は、「自分独自の手術術式を考えて発表してみたい」というぼんやりとした考えしかありませんでしたが、消化器外科の手術に入って腸管の自動吻合器を初めて見た時に「誰がやっても同じ結果をもたらすことができる機器を開発する方がすごいのでは?」と思い始め、そこから医療機器への興味が高まりました。医師8年目で大学院生になり、少し考える時間ができたのですが、その時に「時間ができたのだから新しい知識を身につけて医療機器開発とか何か新しいことにチャレンジしたい」と思っていました。そんなところに先代教授の澤先生からバイオデザインというものがあると聞き、即答で参加を決めました。

バイオデザインを通じて、得られたものはなんですか?また、どのようなことが得られると思いますか?

数えきれないほど多くのものを得ることができましたが、一番大切なものは『人脈』だと思います。医療機器開発は、医学・工学・ビジネス・特許・薬事・保険に関する総合的な知識が必要です。もちろんバイオデザインはこれらの知識を広く浅く学ぶことができますし、デザイン思考を用いることで課題設定を正しく行う力を徹底的に磨くことができます。しかし、一人で医療機器開発の全てを行えるスーパースターなんてこの世にいませんので、必ず誰かに『助けてもらう』ことになります。そんな時、大切なのは"Know How"ではなく、”Know Who”です。バイオデザインは医療機器開発の経験者が世界中にネットワークを形成していますので、きっとどこかで自分の困りごとを解決してくれる誰かに出会うことができます。人任せな印象を受けるかもしれませんが、一人でできることなんて限られているので、悩むくらいなら早く誰かと繋がる方がいいということをバイオデザインを通じて学びました。

バイオデザインを学ぶにはどうすればよいのでしょうか?大阪大学や心臓血管外科に限ったものなのでしょうか?

2023年2月現在、日本でバイオデザインフェローシップの対応をしているのは大阪大学・東京大学・東北大学の3つです。大阪大学では心臓血管外科に限ったものではなく、婦人科や整形外科領域の機器開発にも取り組んできましたし、今後も診療科の裾野を広げていきたいと考えています。大阪大学でバイオデザインに参加してみたいという方は僕に連絡してください。Global Facultyの私が対応します。

これからのバイオデザインを含めた先生の展望を聞かせてください

私の目標は大阪大学をスタンフォード大学みたいすることです。面白い医療機器の起業案件が次々と大阪大学から現れて、大手医療機器メーカーに買収されるような強力な医療機器開発の基盤を構築できればと思っています。私自身も根っからの大阪人ですが、大阪人は変なこと・新しいこと・面白いことを好む人種が多いので、大阪は日本で最もシリコンバレーに近いと思っています。シリコンバレーのエコシステムは30年かけて構築されたものですので、大阪も時間はかかると思いますが、まずは自分がその一歩を踏み出して起業します。そして、医者が起業するという考えがもっと受け入れられる社会になれば幸いです。