2009年

 

本田 賢也、新 幸二 ≪免疫制御学≫ 「セグメント細菌による消化管Th17細胞誘導」


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2009年10月30日 発表
掲載誌 Cell,139(3):485-98, 2009

セグメント細菌による消化管Th17細胞誘導

消化管には数百の常在細菌が存在している。免疫制御学教室本田賢也准教授(JSTさきがけ研究者兼務)と新幸二助教は、ニューヨーク大学とヤクルト中央研究所との共同研究成果として、腸内細菌のセグメント細菌(Segmented Filamentous Bacteria)が、免疫細胞である「Th17細胞」を誘導することを明らかにした。 Th17細胞は、インターロイキン17やインターロイキン22を高産生するCD4陽性ヘルパーT細胞である。細菌(緑膿菌など)や真菌(カンジダ菌など)に対する感染防御に極めて重要な役割を果たしていることが知られている。一方でその行き過ぎた応答が、自己免疫疾患である慢性関節リウマチやクローン病や潰瘍性大腸炎など深く寄与していることも証明され、近年、自己免疫疾患という文脈でも非常に注目されている。今回3施設は共同研究により、①セグメント細菌が腸管に存在しているマウスに於いてはTh17細胞が沢山存在していたが、セグメント細菌を持たないマウスにおいてはTh17細胞が少数しか存在しなかったこと、②セグメント細菌を持たないマウスにセグメント細菌を投与するとTh17細胞が著増したこと、③セグメント細菌が存在し、腸管にTh17細胞が多く存在するマウスは、病原性細菌の感染に対して高い抵抗性を示すようになる、という実験結果を得た。 以上のことから、セグメント細菌が消化管のTh17細胞を特異的にかつ強力に誘導する細菌の一つであり、腸管にTh17細胞が沢山存在すると、病原性細菌に対して宿主は強くなるという結論に達した。 今後、ヒトにおいて、セグメント細菌あるいは同様の役割をもつ腸内細菌を特定できれば、腸内のセグメント細菌を調節することで、潰瘍性大腸炎やクローン病などの病気を改善したり予防したりする道が開けることが期待できると考える。

免疫制御学