2009年

 

村上 正晃、平野 俊夫 ≪免疫発生学≫ 「感染で発現する肝臓由来のIL-7によるT細胞の反応性の制御」


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2009年3月12日 発表
掲載誌 Immunity 30, 447-457, 2009

感染で発現する肝臓由来のIL-7によるT細胞の反応性の制御

IL-7はT細胞の反応性を規定するサイトカインとして古くから知られてきた。これまでの研究か ら、(i)IL-7のノックアウトマウスではT細胞がほとんど存在しないこと、(ii)活性化T細胞ではIL-7受容体の発現が非常に低下するが、メモ リーT細胞では逆に上昇していること等の実験事実から、“生体内では、IL-7は外来刺激によって誘導される事は無く、T細胞へのIL-7の刺激はIL- 7受容体の発現強度によって制御されている”と信じられてきた。一方、肝臓は炎症のセンサーとして知られてきた。実際に感染等による炎症後に産生される IL-6は肝臓に作用してCRP等の急性期タンパクを血中に発現する。CRPを含む急性期タンパクは、一般的な血液検査にも用いられて生体内の炎症のマー カーとして知られている。しかし、これまでに急性期タンパクでT細胞に直接作用するものは知られていなかった。今回、我々は、感染後のTLR信号にて誘導 される1型インターフェロンが肝細胞に直接作用して肝臓から血中に多くのIL-7が循環すること、さらに、そのIL-7がCD4+T細胞およびCD8+T 細胞の生存を誘導してCD4+T細胞およびCD8+T細胞の反応性を増強することを示した。つまり、IL-7は肝臓から感染等によって引き起こされた炎症 時に誘導される急性期タンパクでT細胞に直接作用してその機能を増強して感染等を制御するサイトカインである事が判明した。

URL http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molonc/www/