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  • 浦 聖恵、金田 安史 ≪遺伝子治療学≫ 「ヒストンH3K36トリメチル化酵素WHSC1の異常はNkx2-5などの転写因子機能障害によって4p症候群を引き起こす」

浦 聖恵、金田 安史 ≪遺伝子治療学≫ 「ヒストンH3K36トリメチル化酵素WHSC1の異常はNkx2-5などの転写因子機能障害によって4p症候群を引き起こす」




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2009年6月1日 発表
掲載誌 Nature,460:287-91,2009

ヒストンH3K36トリメチル化酵素WHSC1の異常はNkx2-5などの転写因子機能障害によって4p症候群を引き起こす

ヒストン修飾は、様々な酵素によって担われ、特異的なタンパク質によって認識されて転写制御シグナルとして機 能する。中でもヒストンH3の36番目リシン残基のトリメチル化(H3K36me3)は、種を越えて転写活性の高いゲノム領域に存在し、今日、進行中の転写マークとして捉えられている。しかし高等真核生物におけるH3K36me3の制御およびその機能は未だに良く分かっていない。今回、私たちは心疾患、精神遅滞、発育不良などを特徴とする4p症候群の4番染色体欠損領域にあるWolf-Hirschhorn syndrome candidate 1 遺伝子(WHSC1)がH3K36me3酵素であり、マウスES細胞では転写制御因子Nanog、Sall1、Sall4とマウス胎児心臓では心臓形成転 写因子Nkx2.5と複合体を形成して、それぞれのターゲット遺伝子の転写発現を調節することを見出した。Whsc1欠損マウスは4p症候群で見られるように心臓の心房・心室中隔欠損など正中線に沿った様々な形態異常を示し発育不良で出生直後に死亡する。実際に遺伝学的相互作用がNkx2.5Whsc1の両遺伝子間に認められた。以上の結果からH3K36me3酵素Whsc1が、Nkx2-5をはじめとする組織特異的な転写因子の機能を統合的に調節する新 規の転写制御様式をここに提唱する。私たちの発見は、ヒトにおいてH3K36me3の意義をはじめて明らかにしただけでなく、4p症候群の分子病態の解明につながり、ひいてはこの疾患の治療法の開発にも貢献することが期待される。

URL http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/gts/

遺伝子治療学