2016年

 

山下 俊英≪分子神経科学≫ 神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明

免疫制御学-1
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2016年7月5日 発表
掲載誌Molecular Psychiatry(2016) doi:10.1038/mp.2016.106

染色体のわずかな重複や欠失が様々な病気の原因となることは広く知られています。その中で、16番染色体のごく一部の16p13.11部位が重複すると、神経発達障害が発症することは知られていましたが、その原因分子は明らかではありませんでした。本研究グループでは、公共のデータベースより得られた患者情報を元に重複部位の中の8個の遺伝子に着目し、それらの遺伝子の発現・働きをマウスの脳内で明らかにしました。さらに、BACトランスジェニック法を用いてヒトの重複部位をマウスゲノムに組み込み、観察したところ、神経新生異常と神経発達障害の症状を呈することが分かり、特定の染色体部位の重複による神経発達障害群の発症を解明できました。さらに機能解析を行い、重複部位の中の8個の遺伝子のうち、miR-484が責任遺伝子であることを突き止めました。miR-484は大脳皮質の神経細胞が生まれてくる時に発現し、神経幹細胞の神経細胞への分化を促していました。したがって染色体重複によってmiR-484が過剰に発現されると、神経幹細胞の増殖と分化のバランスが崩れて、病態が生じると考えられました。またmiR-484はpcdh19の発現を抑制することで、機能を発揮することも明らかにしました。

URL分子神経科学