2016年

 

北村 哲久≪環境医学≫ 日本における市民による電気ショックと院外心停止

免疫制御学-1
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2016年10月27日 発表
掲載誌The New England Journal of Medicine(2016) doi:10.1056/NEJMsa1600011

市民が自動体外式除細動器(automated external defibrillator: AED)を使用することで、病院外において発生した電気ショックの適応である心室細動心停止患者に対して、救急隊より早い電気ショックを実施することが可能です。日本では2004年7月以降に市民によるAEDの使用が法的に許可されて以降2013年時点で約42万台ものAEDが公共の場に設置されていますが、国家規模でのAED普及効果についての検討は十分されていませんでした。本研究では、総務省消防庁の救急蘇生統計(ウツタイン統計)を用いて、2005年から2013年までの市民に目撃された心原性院外心室細動患者43,762人を対象とし、その効果を評価しました。その結果、AEDを用いた市民による電気ショックを受けた患者は、電気ショックされなかった患者に比べ約2倍社会復帰率が高くなることが明らかになりました(38.5% versus 18.2%)。またAEDによって社会復帰したと見積もられる生存者数は2005年の6人から2013年の201人まで増加しました。本研究結果は、日本では市民によるAED使用が増えたことが心室細動心停止後に社会復帰する患者数を増加させたことを明らかにするとともに、我が国を含め先進国などで今後のAEDの普及や適正配置、また費用対効果を考えるうえでの重要なデータとなるものです。

URL環境医学