2016年

 

林 竜平≪幹細胞応用医学寄附講座≫、西田 幸二≪眼科学≫ ヒトiPS細胞からの協調的な眼組織発生と角膜機能の回復

免疫制御学-1
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2016年3月9日 発表
掲載誌Nature(2016) doi:10.1038/nature17000

眼は、異なる細胞系譜の原基に由来する高度に特殊化した組織から構成される複雑な器官です。 例えば、網膜は神経外胚葉から眼胞を経て発生し、角膜上皮は表面外胚葉由来ですが、虹彩やコラーゲンが豊富な角膜実質は神経堤が起源です。多能性幹細胞の培養を用いた最近の研究は、網膜や網膜細胞を中心として、これまでは理解が不十分であった、細胞に本来備わる自己組織化能について明らかにしました。さらに、我々や他の研究者もin vitroで多能性幹細胞から角膜上皮細胞の表現型を誘導できることを実証しています。しかし、これらの研究は、単一の組織に特化し焦点を合わせたものであり、眼全体の発生の複雑性を反映していません。今回我々は、ヒト誘導多能性幹細胞から、眼の種々の細胞からなるSEAM(self-formed ectodermal autonomous multi-zone)を誘導したことを示しました。いくつかの点で、この同心円状のSEAMは眼全体の発生を模倣しており、異なる帯状構造内の細胞配置が、眼表面外胚葉、水晶体、神経-網膜、網膜色素上皮の細胞系譜を示しています。従ってSEAMは眼の形態形成についての新しい研究および現在進行中の研究の有望なリソースになります。また、このアプローチはトランスレーショナル研究への展開の可能性も秘めています。その例証として、SEAMの眼表面外胚葉帯から分離した細胞をソーティングして、ex vivoで増殖させ角膜上皮を形成させると、この角膜上皮は実験的に誘導した角膜上皮幹細胞疲弊症の動物モデルにおいて機能を回復させることを示しています。

 

URLhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ophthal/www/