2016年

 

菊池 章≪分子病態生化学≫ Dickkopf1の新規受容体CKAP4を介する腫瘍形成機構

免疫制御学-1
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2016年6月20日 発表
掲載誌Journal of Clinical Investigation(2016) doi:10.1172/JCI84658

細胞外分泌タンパク質Dickkopf1 (Dkk1)は、Wntシグナル阻害因子として報告されており古くは腫瘍抑制因子と考えられていました。一方で、Dkk1は膵がんや肺がん、食道がん、乳がん等において過剰発現しており、近年Dkk1にはがん細胞の増殖を促進する機能があると推測されていましたが、そのメカニズムは不明でした。私共は細胞膜に存在するDkk1結合タンパク質を網羅的に解析して、Dkk1の新規受容体としてCytoskeleton-associated protein 4 (CKAP4) を同定しました。また、Dkk1が結合することでCKAP4にPI3Kが結合しAKTの活性化を介して、細胞増殖を促進すること、Dkk1とCKAP4の両者は膵がんおよび肺がんで高頻度に腫瘍部特異的に過剰発現しており、両者の発現している症例は予後が悪いことを見出しました。さらに、Dkk1もしくはCKAP4の発現抑制および抗CKAP4抗体による機能阻害がDkk1とCKAP4の両者が高発現している膵がんおよび肺がん細胞株のAKTの活性化を抑制し、マウス皮下での腫瘍形成を抑制することを明らかにしました。これらのことにより、抗CKAP4抗体が、新しい抗がん剤として有用となることが期待されました。

 

URL分子病態生化学