2016年

 

上田 豊≪産科学婦人科学≫ 子宮頸がん予防ワクチンの接種勧奨一時中止の継続に伴う、HPV感染の生まれ年度による格差

免疫制御学-1
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2016年6月29日 発表
掲載誌The Lancet Oncology(2016) doi:10.1016/S1470-2045(16)00147-9

大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室の田中佑典医員と上田豊助教らの研究グループは、1993年度~2008年度生まれの日本女性の20歳時のHPV16・18型感染リスクを、生まれ年度ごとに算出し、勧奨再開が1年遅れるごとにHPV16・18型の感染率の高い集団が生じ、HPV感染リスクが生まれ年度によって大きく異なる可能性があることを明らかにしました(図)。
子宮頸がんの原因となるHPV16・18型の感染は、子宮頸がん予防ワクチンの接種により防ぐことができます。日本では2013年4月から12-16歳を対象とした定期接種が始まりました。しかしながら、同年6月以降、副反応とされる多様な症状の出現の影響で厚生労働省によるワクチン接種の勧奨が一時中止された状態がつづいており、その結果、生まれ年によってワクチンの接種率に大きな差が生じています。
本研究により、子宮頸がん予防ワクチンの接種率の生まれ年度による違いから生じる、将来のHPV感染リスクの格差を最小限に留めるには、今年度中の勧奨再開が望ましいことが明らかになりました。もし、厚生労働省による勧奨再開が来年度以降になる場合には、勧奨中止期間に12-16歳であった女児を接種対象に含めることでその影響を最小限にできる可能性があります。
日本では、子宮頸がん予防ワクチン接種の勧奨が一時中止しただけでなく、子宮がん検診受診率も諸外国と比べて非常に低いため、将来の子宮頸がん発症のリスクが懸念されます。

URL産科学婦人科学