研究内容

作業療法士による臨床・研究活動

私たちのグループでは、精神疾患や認知症のある方が、住み慣れた環境でその人らしい生活を続けるための支援について、作業療法の視点から臨床と研究を行っています。

作業療法では、認知機能や精神症状だけでなく、食事、更衣、家事、買い物、服薬、外出、余暇活動、社会参加など、実際の生活の中で生じる困難を評価します。当グループでは、患者さんやご家族から生活上の困りごとを丁寧に伺い、生活機能、行動・心理症状、住環境、家族支援、支援機器の活用などを多面的に検討しています。

医師、心理士、言語聴覚士、看護師、社会福祉士、工学研究者などと連携し、臨床現場で実行可能であり、患者さんとご家族の生活に直接役立つ研究成果を生み出すことを目指しています。

臨床に根ざした生活機能評価

認知症や精神疾患に伴う生活障害は、単に「できる・できない」だけでは十分に捉えられません。私たちは、課題をどのような手順で行っているか、どの場面でつまずくか、どの程度の声かけや環境調整があれば遂行できるかまで詳しく評価しています。

認知機能検査や精神症状の評価に加え、ADL・IADL、生活環境、家族の介護負担、社会参加、生活の質などを総合的に検討し、本人にとって意味のある支援につなげることを重視しています。

主要な研究テーマ

認知症と日常生活機能

アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、軽度認知障害などを対象に、認知機能の変化が日常生活にどのような影響を及ぼすかを研究しています。

食事、更衣、服薬、買い物、家事、外出などの日常生活活動について、障害が現れる順序や遂行過程を明らかにし、早期の生活障害を捉える評価法の開発・検証にも取り組んでいます。また、大規模データベースを活用し、認知症の進行に伴う生活機能の縦断的変化を検討しています。

行動・心理症状と生活環境

認知症に伴う幻視、妄想、焦燥、拒否などの行動・心理症状は、認知機能や脳病変だけでなく、住環境、生活習慣、家族との関係、支援者の関わり方によっても変化します。

当グループでは、患者さんの実際の生活場面を丁寧に観察し、自宅の写真や具体的な環境情報も用いながら、症状が生じる背景を検討しています。これらの知見をもとに、環境調整、活動の組み立て、家族への助言など、作業療法的な支援方法を提案しています。

若年性認知症と社会参加支援

65歳未満で発症する若年性認知症では、就労、家事、子育て、経済的役割、家族関係など、高齢発症の認知症とは異なる生活上の課題が生じます。また、視空間認知障害、言語障害、行動変化などが目立つ場合もあり、多職種による個別的な支援が重要です。

私たちは、若年性認知症のある方の生活課題、社会参加、家族支援について、臨床と研究の両面から取り組んでいます。また、英国を中心に展開されているRare Dementia Supportにも関与し、希少認知症の当事者と家族を支える国際的な取り組みに参加しています。

支援技術・ロボット・ICT

会話ロボット、オンライン支援、スマートフォン、生活支援機器などを用いて、独居高齢者や認知機能低下のある方の自立生活、社会参加、心理的安定を支える方法を研究しています。

技術を導入すること自体を目的とするのではなく、本人の生活上の目標や価値観に沿って活用できるか、使いやすいか、長期間継続して使用できるかを重視しています。さらに、安全性、プライバシー、家族や支援者の負担、倫理的課題についても検討しています。

遠隔評価と地域生活支援

医療機関への受診が難しい方や、感染症流行時にも継続して評価・支援を行えるよう、オンラインを用いた生活機能評価や遠隔支援の方法を検討しています。

病院内での評価だけでなく、自宅や地域での生活状況を把握し、医療、介護、福祉の支援者と情報を共有することで、切れ目のない支援につなげることを目指しています。

お問い合わせ

グループ見学、共同研究についてのお問い合わせは、和風会事務局までご連絡ください。

和風会事務局:wafukai@psy.med.osaka-u.ac.jp