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ご挨拶

教授挨拶

大阪大学医学系研究科
心臓血管外科 教授

宮川 繁 教授

「時代を先取りする最新医療を患者さんのもとへ」

大阪大学の外科教室は1881年に初代教授に熊谷省三先生が着任され開設された伝統ある教室です。その中でも大阪大学心臓血管外科は、1922年にドイツからヘルテル教授が招請され、第一外科として新たな教室を立ち上げられて以来、日本初の開心術を皮切りに、秀逸な先天性心疾患の術式の開発、脳死法案下での心臓移植、大動脈瘤に対するステント治療の開発、世界初の心不全に対する再生医療等製品「ハートシート」の保険収載、世界初の他家iPS細胞由来心筋細胞シート移植等の先駆的な業績を残してきました。この1世紀の間、絶え間ない研究と飽くなき挑戦をし続ける精神の元、これまで国内外の心臓血管外科を牽引してきました。さらに我々は世界に冠たる組織への成長を目指し、先達のDNAを受け継ぎながら、絶えず時代を先取りする臨床・研究を行い、これまで治すことのできなかった患者さんに福音をもたらしていこうと考えております。

臨床

「循環器領域における高度外科治療を提供」

当科の特徴は、心臓弁膜症、冠動脈疾患、重症心不全、先天性心疾患、そして末梢動脈疾患等全ての循環器疾患に対する外科治療が可能なことであり、特に重症化した疾患の外科治療において、良好な成績をおさめてきました。
そして当科においては、他施設に先駆けて大動脈弁に対する低侵襲手術(経カテーテル的大動脈弁置換やSutureless弁)を導入すると同時に、僧帽弁に対するロボット手術、小切開弁膜症手術(MICS手術)、カテーテルを用いたMitral Clipを導入してきました。また、大動脈瘤に関しては、ステント治療を世界に先駆けて開発し、これまでの治療とのハイブリット治療を積極的に行ってきました。上記のように、当科は心臓血管外科における低侵襲手術のリーディングホスピタルであり、今後も更なる発展が期待されます。
また、心不全外科治療は、本邦において当科が先導してきた分野です。海外で開発された植込み型人工心臓の日本での認可は極めて遅く、このデバイスラグを取り戻すため、本邦では未認可であった植込み型人工心臓を初めて導入し、その保険収載や永久使用(Destination therapy)に繋げてきました。心臓移植においては、脳死法案下での心臓移植を再開させ、心肺同時移植や小児心移植が施行可能な国内有数の移植施設であります。さらに、循環器内科とハートチームを形成し、患者さんの病気を内科、外科両面から検証することにより、患者さんにとってベストな高度医療を提供しています。

研究・教育

「常にベッドサイドを意識した基盤研究とAcademic Surgeonの育成」

当研究室の研究の基本理念は、10年後を見据えた、常にベッドサイドを意識した研究テーマの構築と実践、特にトランスレーショナルリサーチを真髄とした研究を基盤として発展してきました。自己筋芽細胞シートは2002年から東京女子医科大学との共同研究のもと、基盤研究から始まり、臨床研究、治験を経て、世界初の心不全に対する再生医療製品「ハートシート」として、虚血性心筋症に対して保険償還されました。本技術は我が国の誇るトランスレーショナルリサーチの賜物であり、最近では国内外の企業が新しい医療機器開発のため我々の教室へ参入していただいております。多数の企業の参画による強固な産学共同開発体制、多額の研究資金投入、及び優秀な人材の確保により、我々の基盤研究や製品開発の速度はさらに加速しており、我が国を代表するトランスレーショナルリサーチを専門とした研究機関に発展してきました。iPS細胞に関しては、2006年から京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授と共同研究を開始し、筋芽細胞シートで培ってきた技術を参考にしながら、臨床応用の上で問題とされてきた造腫瘍性を克服し、2020年に世界初のiPS細胞由来心筋細胞を用いた心不全患者に対するFirst in human試験を行いました。
一方で、医学は日進月歩の進化を遂げていますが、依然治癒することが困難な疾患も多数存在していることも事実です。難治性疾患に病める患者の福音となるべく、さらに新しいコンセプトを兼ね備えた新規治療法の開発を行っており、様々な技術を用いて、拡張型心筋症をはじめとした難治性疾患をターゲットとした新しい治療体系の確立を目指しています。これまで当教室では、トランスレーショナルリサーチを通じて、Academic Surgeonを目指した人材の育成を行ってきました。この10年間でpublishした論文は532編に達し、46名の医学博士取得者を輩出しました。そして、当研究室に参画する企業は48社を数え、心臓血管外科関連共同研究講座・寄附講座はこれまで9講座が設立されてきました。
また最近では、米国からバイオデザインという考え方を導入し、若手心臓血管外科医が臨床の現場からヒントを得て医療機器を開発し、ベンチャー設立に繋げる試みが行われています。新しい心臓血管外科学の創造という当科が掲げる理想を追求し、様々な分野に精通した多数の有能な研究者を招聘することにより、研究室に多様性を持たせ、新しい発想が創造される組織に発展しております。

当科の紹介