NEWS & TOPICS

伝習から発信へ。大阪大学大学院医学系研究科・医学部の最新情報。
  • トップ
  • >
  • NEWS & TOPICS
  • >
  • 大阪大学医学部附属病院 タカラバイオ・サーモフィッシャーサイエンティフィックとのがんクリニカルシーケンスの社会実装に向けた連携の推進

大阪大学医学部附属病院 タカラバイオ・サーモフィッシャーサイエンティフィックとのがんクリニカルシーケンスの社会実装に向けた連携の推進

 


エキスパートパネルの様子

 

2018年3月5日発表

概要

大阪大学医学部附属病院(以下、阪大病院)は、タカラバイオ株式会社(以下、タカラバイオ)、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ・ライフテクノロジーズジャパン株式会社(以下、サーモフィッシャー)と、がんクリニカルシーケンス1の社会実装を目指した連携推進について、協議を開始いたしましたので、お知らせいたします。

ゲノム情報に基づき、疾患の診断や治療を行うゲノム医療2は、特にがん領域において、新たな診断法・治療法の開発や効果的な薬剤の選択等に繋がると期待されています。阪大病院は、20184月に厚生労働省より「がんゲノム医療中核拠点病院」に指定されることになりました。

今後、阪大病院に設置されたクリニカルシーケンスラボにおいて、がんクリニカルシーケンスの臨床研究および先進医療を三者で実施する予定です。具体的には、サーモフィッシャーは同社の保有するがん遺伝子パネル3OncomineTM Target Test4」を提供し、タカラバイオは次世代シーケンサー5を用いてデータ取得・解析を行い、大阪大学は医学的解釈が可能な専門家集団(エキスパートパネル6)を組織し、解析結果を評価します。また、臨床研究を実施した後、先進医療の実施や、がん遺伝子パネル検査として薬事承認取得を目指します。

阪大病院のクリニカルシーケンスラボは、日本初の院内完結型CAP-LAP7対応(CLIA8準拠)施設であり、また使用するがん遺伝子パネル検査は次世代シーケンサーを用いた検査としてすでに米国食品医薬局(FDA)に認可されています。国際基準のがん遺伝子パネルと品質管理体制で研究にあたります。

用語説明

※1 がんクリニカルシーケンス
遺伝子解析を医薬品の開発や治療などの臨床応用につなげることを指す。患者さんに最適な化学療法(分子標的薬剤や抗がん剤など)を調べる手法の一つとして、患者のがん関連遺伝子異常を網羅的に解析するなど、近年注目されている。

※2 ゲノム医療
個々のヒトのゲノム情報を解析し、その結果を基に、効率的かつ効果的な疾患の診断・治療・予防を行うこと。

※3 がん遺伝子パネル
患者検体をサンプルとして、複数のがん関連遺伝子の異常を解析する技術のこと。

※4 Oncomine Target Test
複数のがん関連遺伝子の異常を解析できるがん遺伝子パネル。米国食品医薬局(FDA)により、複数の非小細胞肺がん治療薬の適用判定を行えるコンパニオン診断薬として承認された「Oncomine Dx Target Test」の研究用試薬のこと。

※5 次世代シーケンサー
従来のサンガー法を基にしたシーケンス技術とは異なる原理に基づいた塩基配列解析装置で、数百から数億個の塩基配列データを並列に大量取得することができる。

※6 エキスパートパネル
本件では、大阪大学のがん薬物療法・遺伝医学の専門家や遺伝カウンセリング担当者、がんゲノム倫理の専門家、タカラバイオ社の経験豊富な次世代シーケンス解析担当者やバイオインフォマティシャンによって構成される。

※7 CAP-LAP
CAP(College of American Pathologist)は、米国の品質マネジメントシステムツールの提供・検査室認証及び教育などを主な業務としている米国病理学会。LAPLaboratory Accreditation Program)はCAPにより毎年実施されている世界最大規模の国際的な臨床検査成績評価プログラム。CAP-LAPは臨床検査室の認証登録で、臨床検査室の設備等のハード面と臨床検査室を運営するソフト面が査察の対象となる。

※8 CLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments
米国CMSCenter for Medicare & Medicaid Services)が管理する、ヒト検体を取り扱う臨床検査ラボの品質保証基準。


クリニカルシーケンスラボが設置されたオンコロジーセンターの入口