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「大阪大学ジャパンバイオデザイン」の成果 医療機器イノベーションエコシステム構築への第一歩

7月19 日発表

 

概要

大阪大学は、日本において持続的に医療機器イノベーションを生み出すエコシステムを構築するために、文部科学省、日本医療研究開発機構(AMED)の「橋渡し研究戦略的推進プログラム」1による支援を受け、東京大学・東北大学と連携して、スタンフォードバイオデザイン2と共同で、2015年から医療・ヘルスケア機器開発の次世代を担うイノベーションリーダーを育成する「ジャパンバイオデザイン フェローシッププログラム3」を開発してきました。大阪大学では、大学院医学系研究科バイオデザイン学共同研究講座が中心となり、国際医工情報センターとのパートナーシップの下、従来のような技術シーズをもとにするのではなく、医療現場の潜在的なニーズをもとにソリューションを開発し、事業化することができる人材を育成するとともに、プログラム修了後もプロジェクトの事業化に向けた支援を実施しています。

ジャパンバイオデザイン全体では、これまでに修了した第I期、第II期フェローシッププログラムの合計6チームのプロジェクトから、既にスタートアップ2件、ならびにライセンシング1件という成果が得られており、同様の人材育成を実施している海外のプログラムと比較して早期に著しい成果が挙がっています。

I期フェローシッププログラムの大阪大学チームからは、国内死因別死亡者数第2位である心疾患の予後改善を目指して、在宅にて適切に心臓リハビリテーションを実施できる遠隔医療を実現するプロジェクトが立ち上がり、20173月には、大学院医学系研究科 谷口達典(たにぐち たつのり)循環器内科医師が株式会社リモハブ4を設立しました。その後、バイオデザイン学共同研究講座にてプロジェクトを継続して実施し、このたび、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社(大阪府吹田市、代表取締役社長・神保敏明)及びHack Ventures株式会社(大阪府大阪市、マネージング・パートナー・金沢崇)を引受先とする第三者割当増資5を実施しました。今回の資金調達により、今後の医療機器の許認可、保険適用、システム普及の実現へと、事業化の加速が期待されます。

本件は、プログラム期間も含めて3年以内という短期間で、全く白紙の状態からプロジェクトを立ち上げて起業し、その事業性が評価されて資金調達に成功したというものであり、大阪大学が提供する事業化にフォーカスしたアントレプレナーシップ教育の1つの大きな成果であると言えます。また、日本における医療・ヘルスケア領域におけるアントレプレナー・ロールモデルの創出という点で、医療機器イノベーションエコシステムの構築に貢献するものと考えられます。

 

用語説明

※1 橋渡し研究戦略的推進プログラム
平成29年度より文部科学省の支援の下、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)により実施されているプログラム。大阪大学を含む全国10拠点の大学において、アカデミア等における革新的な基礎研究の成果を臨床研究・実用化するための体制・機能・人材を整備する事業で、ジャパン・バイオデザインプログラムは前事業の「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」(平成24年度~28年度)のサブプログラムの一つとして支援を開始し、現プログラムにおいても支援している。

2 スタンフォードバイオデザイン
2001年にスタンフォード大学のDr. Paul Yockらが、デザイン思考をもとにした医療機器イノベーションを牽引する人材育成プログラムとして開始した。初期段階から事業化の視点も検証しながら、現場のニーズを出発点として問題の解決策を開発し、イノベーションを実現するアプローチを特徴とするプログラムである。18年間で47社が起業、700億円以上の資金調達がなされた。また、150万人以上の患者が創出されたデバイスで治療を受けており、現在インド、シンガポール、アイルランド等世界に広がっている。

3 ジャパンバイオデザイン フェローシッププログラム
選抜された医師、企業エンジニア等、多様なキャリアを持つメンバー34名でチームを構成し、10月から10ヶ月間で、課題発見型革新的医療機器開発手法を実践的に学ぶプログラム。医療現場に入って問題を探索、見つけ出した潜在的な臨床ニーズをもとに解決策を創出し、ビジネスプランを作成して事業化を目指す。

4 株式会社 リモハブ
事業内容: 革新的遠隔心臓リハビリテーション用機器の企画、開発、製造、販売およびリース業
本社所在地:大阪府豊中市  代表取締役:谷口 達典(たにぐち たつのり)

5第三者割当増資
株主であるか否かを問わず、ある特定の第三者に対して企業が新株を発行して資金調達を行う方法。

 

特記事項

本件に関して、725日に吹田キャンパスにて記者発表を行いました。

発表者:
八木 雅和(大阪大学 大学院医学系研究科 バイオデザイン学 特任准教授、ジャパンバイオデザイン プログラムダイレクター)
谷口 達典(大阪大学 大学院医学系研究科 バイオデザイン学 特任研究員、株式会社リモハブ 代表取締役)
澤 芳樹 (大阪大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科学 教授、ジャパンバイオデザイン チーフダイレクター)
坂田 泰史(大阪大学 国際医工情報センター長、大阪大学 大学院医学系研究科 循環器内科学 教授)
神保 敏明(大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役)
金沢 崇 (Hack Ventures株式会社 マネージング・パートナー)