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医療機器開発の次世代リーダー育成プログラム ジャパン・バイオデザインから大阪大学臨床医が初の起業~革新的”遠隔”心臓リハビリテーション用機器を事業化へ~

 


2017年5月8日発表

概要

大阪大学大学院医学系研究科・国際医工情報センターでは、東京大学・東北大学・スタンフォード大学と提携し、2015年から医療・ヘルスケア機器開発の次世代を担うイノベーションリーダー人材を育成する日本版バイオデザイン※1プログラムを開発してきました。本プログラムでは、産業界において期待されながら事業化になかなか至らない革新的な医療機器開発について、従来のような技術シーズをもとにした開発ではなく、医療現場の潜在的なニーズをもとに開発し、事業化することができる人材を育成しています。

このたび、ジャパン・バイオデザイン※2大阪大学フェローシップ プログラム 第I期チームが推進したプロジェクトより派生した事業を、より効果的に推進するために、本年3月、初の起業となるスタートアップ:株式会社 Remohab (リモハブ)が設立されました。本事業では、実施率が低い心臓リハビリテーションについて、IoT技術を効果的に活用して在宅にて適切に実施できるようすることで、国内死因別死亡者数第2位である心疾患の予後を改善することを目指しています。

現在、資金の獲得や特許取得も進めており、同様のプログラムを有する海外のプログラムと比較してもとても早い成果となっています。また、事業の成功を通じて、日本における医療・ヘルスケア領域における起業モデルを創出し、本分野におけるイノベーション・エコシステム構築に貢献するなど、今後の活躍・発展が期待されます。

スタートアップ事業の設立経緯

2015年10月より、大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学の谷口達典(たにぐち たつのり)医師、および企業から派遣された3名のエンジニアにより構成されるチームで、ジャパン・バイオデザイン大阪第I期フェローシップ 人材育成プログラムが開始されました。10ヶ月間のプログラムを通して、医療現場の観察・ニーズ探索、ニーズの評価・選択、コンセプト創出、ビジネスモデル検証等を実施しました。プログラム修了後、引き続き6ヶ月間、さらに臨床・事業化の視点での検証、ならびにプロトタイプ作成・検証等を実施し、試作第一号機が完成いたしました。

今後は、同試作機を用いた学術的検証を大阪大学にて継続すると同時に、市場での検証等、事業化に向けた検証を加速して実施するために株式会社Remohabを起業いたしました。

事業内容について

心疾患は日本における年間総死亡数のうち19万6,113人であり、死因別死亡数全体の15.2%(第二位)を占め、その中でも最多となっているのが心不全(7万1,820人)と報告されています。日本における心不全患者は120万人以上と推定されており、高齢者に多い疾患であることから今後もさらなる増加が見込まれています。こういった患者さんの心肺機能を改善させるため、従来は外来に通院しながら心臓リハビリテーションが行われていましたが、実際に実施できている患者さんは約1割程度にしかなりませんでした。その理由として、患者さんが高齢であるが故に頻回の病院通院ができないことが挙げられます。そこで、株式会社Remohabでは、双方向通信技術を活用することで医療従事者によるバイタルサイン・症状把握と負荷管理を実現し、あたかも病院で行っているかの如く、在宅にて適切なリハビリテーションを行うことができるシステムを開発しております。他国では、ウェアラブルデバイスを用いて、在宅運動状況のモニタリングを行うという試みは行われていますが、このように医療従事者によるリアルタイムで適切な管理の下、在宅で心臓リハビリテーションを行うことができるシステムは日本のみならず世界でも今のところ存在しておりません。


現在開発中のシステムイメージ図

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用語説明

※1 バイオデザイン

2001年にスタンフォード大学のDr. Paul Yockらが、デザイン思考をもとにした医療機器イノベーションを牽引する人材育成プログラムとして開始しました。開発初期段階から事業化の視点も検証しながら、医療現場のニーズを出発点として問題の解決策を開発し、イノベーションを実現するアプローチを特徴とするプログラムです。15年間で40社を超える起業を実現し、400件以上の特許出願がなされました。また、20万人を超える患者さんが、創出されたデバイスで治療を受けており、現在インド、シンガポール、アイルランド等世界各国に広がっています。

※2ジャパン・バイオデザイン

文部科学省が創設した「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」の支援を受け、全国7拠点ある橋渡し研究支援拠点のうち大阪大学、東京大学および東北大学が、スタンフォードバイオデザインと共同で医療機器の次世代を担うイノベーションリーダー人材を育成するプログラムを開発。大阪大学大学院医学系研究科・澤芳樹教授がチーフダイレクターとして、国際医工情報センター(センター長:坂田泰史教授)とのパートナーシップの下、医療機器開発人材育成を推進しております。

特記事項

本内容について、5月9日 読売新聞 朝刊、産経新聞 朝刊、朝日新聞 朝刊、YomiDr、朝日新聞DIGITAL、読売ONLINE、5月15日 薬事日報、5月16日 日刊工業新聞 にて掲載されました。