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  4. 神経炎症・てんかんの画像診断

2) PET/SPECT画像診断【腫瘍PET】
神経炎症・てんかんの画像診断

神経炎症PET

てんかん診断のPETとして臨床で用いられているのはF-18 FDG PETです。てんかん病巣では、神経の活動が低下しており、糖代謝も低下しているため、集積の低下部位を評価することによって、病巣が同定されます。しかし、てんかん病巣の同定は通常簡単ではなく、多数のmodalityを必要とする場合が多くあります。
神経炎症においてはグリア細胞でtranslocator protein (TSPO)の発現が亢進するため、TSPOに結合するPETトレーサを用いることで炎症部位を同定できることが知られています。内側側頭葉てんかんでは、病巣に認められるグリオーシスにTSPOリガンドが結合するため、TSPO PETでは高集積となります。当講座では小児科と共同で、様々なタイプのてんかんに関して、TSPO PETを応用し、簡便に病巣を検出する方法を研究しています。

TSPO PETとFDG PET
右側頭葉てんかん

TSPO PET
病巣/健側の集積比の時間変化
病巣/健側の集積比の時間変化

Kagitani-Shimono K, Kato H, et al. J Neuroinflammation. 2021;18:8

てんかんのSPECTおよびPETと部分容積効果補正

てんかん、とりわけ難治性てんかんと呼ばれる疾患は名前の通り、薬剤による治療が困難な疾患です。このような疾患においては、病巣を正しく診断し、その部位を手術で切除する方法で治療が行われます。そのため、病巣をできるだけ正確に推定することが重要です。診断のためには、EEG、MEGなどの電気生理学的検査に加え、MRIや、F-18 FDG PET、I-123 iomazenil SPECTなどの核医学検査が施行されます。このうち、核医学検査、特にSPECTでは解剖学的な異常、特に大脳灰白質の萎縮や病的肥厚によって診断精度が低下してしまいます(部分容積効果)。我々はこれを補正する方法を用いて、てんかん診断SPECTの診断精度を大きく向上させることに成功しました。

てんかん病巣では、グルタミン酸受容体の一つであるAMPA受容体が活性化して神経細胞が脱分極しやすくなっていることが報告されています。最近では、このAMPA受容体拮抗薬が抗てんかん薬として用いられるようになっています。しかし、この受容体のin vivoイメージング法は今まではありませんでした。このAMPA受容体に結合するPETリガンドが世界に先駆けて横浜市立大学で開発されました。当講座で開発した部分容積効果補正法を組み合わせることによって、てんかん病巣を、PET高信号な部位としてより明確に検出することができるようになり、現在、当該PET薬剤および画像解析法に関する治験が施行されています。

I-123 iomazenil SPECTの部分容積効果補正

I-123 iomazenil SPECTの部分容積効果補正
補正を行うことによって、病巣が明確に同定される。

AMPA受容体 PETの部分容積効果補正
左側頭葉てんかん

AMPA受容体 PETの部分容積効果補正 左側頭葉てんかん

Kato H, et al. J Nucl Med. 2008;49:383-389
Kato H, et al. AJNR Am J Neuroradiol. 2012;33:2088-2094
Kato H, et al. AJNR Am J Neuroradiol. 2012;33:1458-1463
Miyazaki T, …, Kato H, et al. Nat Med. 2020;26:281-288