研究・業績

臨床研究グループ

神経内科学教室では、パーキンソン病を代表とする運動異常症を対象として、診断、治療法の開発のため、運動症状、非運動症状を網羅する臨床評価、 生化学的データ、画像データで構成されるデータベースを構築しています。臨床研究グループでは、主に、MRIなどの画像データを用いて、 これらの疾患でみられる多彩な神経症状が起こるメカニズムを研究しています。また、脳波などの脳機能計測技術を用いて、 神経変性疾患や脳卒中についての病態解明の研究もおこなっています。さらに、イップスなどのスポーツに関連する運動異常の病態解明、 治療法の開発に健康スポーツ科学講座とともに取り組んでいます。

研究紹介

パーキンソン病の運動症状、非運動症状の解明

パーキンソン病では、寡動や固縮、筋強剛などの運動症状以外にも、幻覚などの精神症状や便秘のような自律神経症状などの非運動症状も認めます。 また、転倒は、パーキンソン病で問題となる症状ですが、バランス障害という運動機能の問題だけでなく、注意など非運動症状も関わっていると考えられています。 実際、パーキンソン病においては、運動症状のみならず、このような非運動症状が、日常生活動作(activity of daily living:ADL)やquality of life(QOL) に大きく影響を与えることが明らかになってきました。そこで、我々は、安静時MRIや脳波計測を用いて、 どのような脳内ネットワークの異常がこれらの原因となっているかを研究しています。安静時機能的MRIやvoxel-based morphometry と呼ばれる微細な形態学的変化を捉える手法、脳波計測などを用いて、幻覚やパレイドリアなどの視覚認知異常に注目し、その発症メカニズムを研究しています。

     

ニューロモジュレーション手法を用いた神経疾患に対する新たな治療法の開発

近年、非侵襲的な手法で、中枢神経系の機能を賦活/抑制するニューロモジュレーションと呼ばれる技術が注目を集めています。ニューロモジュレーショ ン技術としては、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)などの脳刺激技術がよく知られています。その他、外的な刺激を用いな いニューロモジュレーション手法として、機能的脳画像技術を用いてリアルタイムでの脳活動を被験者に提示することで、随意的に脳活動を制御するニューロ フィードバックと呼ばれる方法も知られており、近年応用が盛んに行われています。(図1)  我々は、NIRSの脳活動測定技術を応用することで、世界に先駆けて、NIRSを用いたニューロフィードバック技術を開発し、その効果を報告しています。 この技術を用いることで、発症後3か月以降の脳卒中後片麻痺患者に対するリハビリテーション効果を高め、片麻痺の回復を促進する効果があることも報告して おり、新たなリハビリテーション介入の方法として注目を集めています。現在はパーキンソン病などの脳卒中以外の神経疾患での応用に向けて、関連病院などと 共同で研究を進めています。

パーキンソン病患者のすくみ足における脳内ネットワークの解明

パーキンソン病の主な運動障害の1つにすくみ足があります。これまでのメカニズム解明の試みでは、 局所的な脳活動や結合を「静的」脳モデルとして説明しましたが、刻々と変化するすくみ足を治療するためには、 従来の「静的」脳モデルではなく、大局的なプロセスを含んだダイナミックな脳活動という側面から病態を捉え直す必要性があります(「動的」脳モデル)。 さらに、すくみ足は根治的な治療法が無いため、リハビリテーションへの期待が高い現状です。そこで、本研究は大規模な脳機能研究により、 すくみ足の原因となる脳活動の動的パターンを突き止め、「動的」脳モデルを構築した上で、リハビリテーションの新規治療法を提案することを目指しています。

メンバー紹介

  • Gajanan Subhash Revankar 特任助教
  • ラジブ・ガンジー大学
  • ラジブ・ガンジー大学,ベルリン脳卒中研究センターなどで勤務
  • 医学博士
  • 谷口 星来 特別研究員
  • 令和1年卒 神戸大学大学院
  • ルーヴェン大学(ベルギー)、情報通信研究機構などで勤務
  • 理学療法士
  • 木村 一皓 大学院生
  • 平成28年卒 大阪大学
  • 大阪大学大学院 生命機能研究科所属
  • 認定内科医

最近の業績

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