研究・業績

神経病理グループ

別宮先生写真

神経病理グループは、剖検ならびに生検検体の病理学的診断を行うことにより臨床へ貢献することを第一の使命としております。加えて当グループでは患者さんの病理検体や実験動物の組織を用いることにより、神経筋難病の原因解明や治療法開発に向けた基礎研究も同時に行っております。

大阪大学での生検筋・末梢神経や剖検脳の病理診断は、1983年からスタートされた歴史のあるものです。その後、阪大病院のみならず関連病院からの依頼を受けて標本を作製するようになり、先輩諸先生方のただならぬ努力もあって、ピーク時には年間あたり100件を超える筋・末梢神経組織、およそ20件の剖検脳の病理診断を行っておりました。しばらく規模を縮小しておりましたが、2020年4月より村山繁雄先生が大阪大学大学院連合小児発達学研究科(神経内科併任)に着任されたことを機に、病理グループのさらなる拡充を目指しております。

特に、日本ブレインバンクネットワーク大阪拠点を阪大精神医学教室や大阪刀根山医療センターと共同で構築すべく、開頭剖検の生前同意システムや他院死亡例の持ち込み剖検システムの導入を行っています。

別宮 豪一

研究紹介

パーキンソン病の治療研究における大きな問題点の1つは、優れた霊長類モデルがないことです。 古くからパーキンソン病モデル動物として確立されているげっ歯類モデルでは、重症度の指標として薬剤反応性の回旋運動を用いますが、 実際の患者さんの症状にそのまま当てはまるものではなく、寡動・振戦・筋強剛といった特徴的な神経学的所見の評価はできません。 また、発症早期の微細な変化を捉えることが困難です。 当教室では、げっ歯類(マウス)で変異α-synucleinフィブリルを用いた進行性PDモデルを既に開発しております(馬場先生、早川先生)が、 同様の手法でマーモセットの黒質にα-synucleinフィブリルを注入することにより、患者さんの発症起点と同じモデル動物の作成を試みています。 評価のための動作解析装置や筋強剛測定装置も開発しており、共同研究先の遺伝子組み換えマーモセットの評価などに使用しています。 今後は行動学検査や画像検査のほか、生化学的、病理学的な解析を行い、治療薬の効果を判定するシステムを作成することで、 疾患修飾薬などの新規薬剤の臨床応用が推進されることが期待されます。

別宮は2019年3月まで米国(Yerkes National Primate Research Center,,Emory University)で霊長類(アカゲザル、カニクイザル)や げっ歯類(ラット)のパーキンソン病モデルを用い、慢性期における線条体の機能異常やこれに起因する不随意運動(L-Dopa誘発性ジスキネジア;LID) の病態解明や治療法の開発を目的とした研究を行っていました。LIDに関連する分子マーカーはいくつか同定されていますが、 このなかで我々はΔFosBという転写因子に注目しています。ΔFosBを線条体に過剰発現させると、LIDが容易に誘発されます。 加えて慢性期パーキンソン病に特徴的な線条体の電気生理学的異常を捉えることができました。 現在は線条体におけるΔFosBの発現を抑制した場合に、線条体機能やLIDにどう影響するかを継続して調べており、 将来的な治療法(遺伝子治療など)の開発につながることが期待されます。 また我々は、線条体の機能異常に過剰なグルタミン酸シグナルが関与しているというデータを発表しており、 線条体におけるグルタミン酸受容体の発現を抑制したときに、線条体の機能やLIDの発現にどのような変化が見られるかも解析中です。

メンバー紹介

最近の業績

臨床研究

基礎研究

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