教室紹介

年度報告

2015年度報告

最初に、変性疾患の基礎研究部門ですが、荒木先生がSpring 8 との共同研究でパーキンソン病剖検脳を用いたαシヌクレインの構造解析をScientific Reports に発表しました。これは、Spring 8 八木先生らと共同でプレスリリースし、幾つかの新聞で報道されました。マレーシアから国費留学している大学院生のChoong さんは、新規パーキンソン病の変性を抑制する薬剤を佐々木先生、関西医大と共同研究で発見し、Neurobiology of Aging に発表、さらに国内・国際特許を取得しました。これらの研究には、馬場先生や研究員の早川さんが指導や補助をしています。また、名古屋大学で線虫の研究をしていた池中先生が阪大神経内科に入局し、臨床・基礎研究の準備を開始しました。遺伝性パーキンソン病の解析に関しては、仲谷先生が華山研(現金沢大学)との共同研究を行っています。一方、蛋白研の吉川先生と共同研究していたネクジンのパーキンソン病に対する遺伝子治療研究がNature Communication に掲載され、新聞取材も受けました。この研究は、元研究員の安田さん(現成育医療センター)が、主に行ったものです。また、仲野研に国内留学している木村先生は、マウス半数体胚性幹細胞の標的遺伝子にレポーターをノックインする方法をScientific Reports 報告しました。その論文は昨年度同誌のBEST 100 に選ばれました。さらに2016 年度から、臨床医で基礎の研究室で研究している優秀な医師を育てるため未来医学特任助教枠(学内で1名)が作られましたが、木村先生が選出されという栄誉を受けられました。我々の研究費としては、遺伝性パーキンソン病の核酸医薬の開発という研究に対して橋渡しB という大型予算を本年度も獲得することができました。核酸医薬に詳しい中森先生が指導しながら上原先生が中心となり研究を推進しています。次にAMED の革新脳プロジェクトと新学術が大きな研究費になります。具体的には、マーモセットを使ったパーキンソン病の発症機序及び治療研究が主になります。馬場先生が指導する中で薮本先生や他の研究者が日々奮闘しています。馬場先生は、漢方医学の寄附講座(吉川教授)萩原先生との共同研究が更に発展し、現在は漢方医学のグラントでポストを取得し活躍されています。

このような先生方の活躍もあり、周りの方々からの支援や研究費の獲得が進んでおります。一つは、神経難病認知症探索治療学寄附講座の設立です。これは、神経難病の基礎研究を設立すべく、多くのご支援を頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。この教室には、永井義隆先生に教授にご就任いただき、新しい研究システムを確立します。世界的なお仕事をしている先生ですので、この教室にはすでに他大学出身の大学院生が大勢集まってきています。我々の教室とも連携を密にして、さらに基礎研究を発展させて参ります。

また、ALS も大変重要な変性疾患です。東北大学の青木教授との共同研究で、HGF を用いた臨床研究がスタートしました。HGF は、阪大で発見されたものですが、すでに基礎研究で有効性を確認して東北大で臨床治験Phase I がスタートしています。東北大学から医師主導治験の要請があり、患者さん方の強い希望もあり、我々の教室でも二重盲検試験を行うことになりました。隅先生は、ALS の専門家ですので2016 年1 月から専任の教員になってもらい治験を行うことになりました。治験は大変なお仕事なので、神経病理に関しては少しお手伝い頂く先生を探しておりましたところ、連合小児の谷池先生が村山先生を大阪大学特別教授としてお迎えすることが決まりました。月1回おいでになるとのことでしたので、我々の教室でも、CPC などのご指導を頂くことが可能となりました。その村山先生のところに神経病理の勉強のために国内留学していた隅蔵先生が、パーキンソン病のαシヌクレインの末梢神経における病態を解明しActa Neuropathologica Communications に報告しました。彼は、昨年度はPMDA に出向し、薬事や研究開発の方法について審査の側から勉強しました。隅先生別宮先生は、PLA2G6 に関連する論文を遺伝学の新沢先生との共同研究でActa Neuropathologica Communications やPLOS ONE に発表しています。

免疫関連でも、大きな研究費を獲得しています。具体的には、NMO 治療を目指した研究で、熊ノ郷先生の研究班で中辻先生、奥野先生が中心となり甲田先生、山下先生、細川先生たちがシングルセルRT-PCR 法という新たなメソッドを導入し治療を目指した研究開発を進めています。また、分子神経科学の山下先生との共同研究でRGM 抗体に関する基礎研究及び臨床研究を行うことになりました。こちらでも、すでにグラントを獲得しております。酢酸PET によるアストロサイト代謝イメージングに関して甲田先生は、日本多発性硬化症協会の医学研究助成を受賞しました。現在腸管免疫に関して奥野先生、高田先生を中心に有機酸に着目し研究を進めています。また現在、門脇先生も山村先生のところに留学して活躍中です。同じく腸管免疫に関する研究でNature Communication に発表予定です。臨床部門でも色々と治療研究が発展しております。その一つが近赤外分光NIRS を用いてリハビリを行うものです。森之宮病院の宮井先生との共同研究ですが、現在AMED の大型研究費を使用しながら、三原先生、小仲先生、藤本先生、乙宗先生を中心に脳卒中、小脳変性症やパーキンソン病の治療研究を進めています。また、機能画像と臨床症状の関連解析や早期パーキンソン病の多施設臨床研究(J-PPMI)、ともえ会関連施設で認知症とパーキンソン病に関する多施設共同研究なども行っています。その他、職業性ジストニアやスポーツに関しても整形外科中田先生のグループと共同で進めています。この度MEIセンターに新しい寄附講座が設立され、三原先生が2016 年4月から特任講師として勤務されることになりました。臨床部門でも色々と治療研究が発展しております。その一つが近赤外分光NIRS を用いてリハビリを行うものです。森之宮病院、宮井先生との共同研究ですが、現在AMED の大型研究費を使用しながら、三原先生、小仲先生、藤本先生、乙宗先生を中心に脳卒中、小脳変性症やパーキンソン病の治療研究を進めています。また、機能画像と臨床症状の関連解析や早期パーキンソン病の多施設臨床研究(J-PPMI)、ともえ会関連施設で認知症とパーキンソン病に関する多施設共同研究なども行っています。その他、職業性ジストニアやスポーツに関しても整形外科中田先生のグループと共同で進めています。この度MEIセンターに新しい寄附講座が設立され、三原先生が2016 年4月から特任講師として勤務されることになりました。

筋疾患のグループも研究が目覚ましく進んでいます。特にグループリーダーの高橋先生は、筋強直性ジストロフィー症の発症機序の研究では世界の第一人者で、不整脈との発症機序について穀内先生らと解明しNature Communication に発表されました。これらの業績が評価され、高橋先生は2016 年4月から大阪大学保健学科の教授にご就任されました。中森先生も、筋強直性ジストロフィー症の新しい治療薬の開発をAnnals of Clinical and Translational Neurology に報告しました。また中森先生は、仲谷先生とトリプレット病の新しい細胞モデルを開発しScientific Reports に発表し、さらにこれら疾患に関して新たな治療開発を行っています。血管障害に関しては、詳しく年報に記載しましたので、そちらをご覧ください。研究としては、臨床研究で三輪先生がcerebral small vessel diseases と認知症のをEuropean Journal ofNeurology やJournal of Alzheimer's Disease にまた旗手先生がmild parkinsoian sign との検討をParkinsonism and Related Disorders に報告しました。竹内先生、木村先生も脳卒中の画像解析研究を継続しています。岡崎先生は、留学中のMRI に関連する研究をStroke に発表しました。基礎研究では、由上先生がangiogenesis とTNF- αの関連についてStroke に報告しています。その他、渡邉先生が佐々木先生と虚血とD-serine に関する研究を、神吉先生は、虚血とCREB シグナルに関する研究を、河野先生が島村先生と虚血とRANKL に関する研究を進めています。

今回は、研究の業績と研究費に関して記載してみました。皆研究成果を一流誌に発表し、日々研究に研鑽しております。その結果、現在の研究費は非常に多いのですが、これも常に成果が要求され、じっくりとした研究ができないのが現状です。大学院生に毎年研究成果を要求するのは酷だと思っています。また、研究費が医局の運営などには勿論使用できませんし、教員の人数が増えており、医局運営も以前に比べ厳しい状況です。ともえ会の先生方におかれましては、大変恐縮でございますが、医局にもさらなるご支援をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 望月秀樹
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