
年度報告
2013年度報告
昨年度は、第1回日本難病医療ネットワーク学会を主催しました。この会は、九州大学吉良教授が福岡県難病医療連絡協議会事業の推進役である難病医療専門員の情報交換と経験の共有化を目的に、平成11年に開催した「中国・四国・九州難病医療専門員研修会」に始まります。その後日本難病医療ネットワーク研究会となり、地域での難病医療・介護・福祉の連携活動を啓発し、全国各地で地域の難病医療ネットワークの活動を行ってきました。第9回の日本難病ネットワーク研究会で学会になることが発表され、第1回の学会を大阪中之島市民公会堂で開催することになりました。この理由は、大阪府急性期・総合医療センターの狭間敬憲先生、澤田甚一先生が、長い間大阪で活躍されてきた成果を認められたことによるものです。参加者が学会になって増えるかどうか心配されたのですが、予想外の650名と大変活気ある会でした。関係各所の皆様には、この場を借りてお礼申し上げます。本学会では初日、厚生労働省疾病対策課西嶋康浩課長佐から難病新法の解説がありました。今後は、その対象疾患数が現在の56から100もしくは300に増えていく可能性があること、神経難病も在宅での診療が主体となり地域との連携が非常に重要になることなどが挙げられました。2025年問題もあり、地域包括ケアシステム等に対応できる仕組みづくりを大学病院も検討する時期が来ていると感じました。特に地域と連携として新規に加わる難病や治療法の説明などの教育が必要になるのではないか、また遺伝性疾患が増加することが予想されるのでそれらの対策も必要になります。家族内での未発症者に対する説明など遺伝相談も更に需要が増すと思われます。現在大阪大学遺伝子診療部では、神経内科のスタッフも何人かでお手伝いをしていますが、これらも地域との連携を行い、患者さんのみならず開業医の先生方にも加わって頂き、地域のネットワークを強化するする必要があると思います。そのようなためにも、本学会の重要性は更に増していくものと思います。皆様のご理解とご支援をいただけますと幸いです。
次に話が変わりますが、神経所見の記載法について述べます。特に腱反射に関しては、日本において場所によりかなり記載方法が異なっています。大阪大学神経内科の記載法は、正常=0、最も亢進した+4はsustainedclonus、+3unsustainedclonus、+2かなり亢進しているがclonusまでは出ないレベル、+1は軽度亢進、-4は全く筋収縮がない、-3は筋収縮しているが関節は動かない、-2は関節が少し動くが明らかに低下、-1は軽度低下と全9段階にわかれています。これは、Mayo Clinic方式です。私自身は、順天堂大学で最初の恩師である楢林博太郎先生が東大方式で、正常はN、活発↑、亢進↑↑、弱い↓、減弱↓↓、消失-と記載しました。水野美邦先生の時代は、消失0、低下1,正常2,亢進3,clonunsレベルの亢進4、でこれは、シカゴのNorthwestern大学方式であると思います。次に私が参りました北里大学神経内科は、慶応方式で正常は+、やや亢進++、亢進+++、著明な亢進++++、減弱±、消失0(-)です。この記載法は、現在日本神経学会においても記載例に採用されています。実は、今年の専門医の症例提出の際に色々なところから研修医が来ていたこともあり、それぞれで腱反射の記載方法が異なっていることに気づきました。大阪大学の脳卒中科は、歴史的には慶応方式でした。それぞれの記載法には歴史があり、特長があります。もちろん大事なのは、腱反射をしっかり診察し適確に評価することにありますので、記載方法は異なっていても良いのかもしれません。しかし、書類の記載やカルテの記載がバラバラなのもどのようなものかと悩んでおります。皆さんのご意見をお聞かせただければ幸いです。
最後に、当科准教授の北川一夫先生が、東京女子医大の主任教授に就任しましたことをご報告します。北川先生は、脳卒中領域では臨床・研究とも頑張っていましたので、脳卒中の大家である内山前教授からスムーズに移行されるのではないかと思います。北川先生は、毎朝のカンファレンスや回診で脳卒中のみならず、神経内科の患者さんも多数診察されていましたので、女子医大でも脳卒中以外の臨床・研究においてもご活躍されると思います。大阪大学では、北川先生の後任として坂口学先生が脳卒中グループのリーダーとしてすでに新しいプロジェクトを進めています。6月中には脳卒中グループの研究室も、6階から神経内科のL階に移動し、活動します。さらに教室が発展していくよう、皆様のご支援・御鞭撻の程宜しくお願い致します。