教室紹介

年度報告

2016年度報告

今年度は、研修医の研修について述べる。昨今、新臨床研修制度が問題になっているが、どのようなシステムになっても本当に研修医のために良いものにしてもらいたい。神経内科を主催する教室や医局の研修システムは、それぞれが研修医の教育に力をいれていかなければならないのは言うまでもないが、本神経学会の独自の教育プログラムが必要になってくるのではないかと思う。海外では神経生理、神経病理、神経放射線、精神科、脳外科などの研修が必要なのだが、日本の現状では全てを研修することは難しい。日本神経学会では、研修医のセミナーなども開催され、少しでも健全な研修ができるように工夫をしている。

我々の教室では、若手神経内科医のための臨床研修システム確立には最大限の力を注いでいる。神経病理に関しては、年々剖検が少なくなっているため、NCNP、健康長寿医療センター研究所のシステムに加えて頂き、まず剖検の生前同意のシステムを確立した。そのために病理学教室の森井教授の全面的なご支援をお願いした。大阪大学神経内科を受診し、すでに生前同意を受けている患者さんが他院で亡くなった際に、大阪大学の神経内科が夜間でも直接応対することで病理との連携が可能となった。さらに、連合小児の谷池教授のご支援のもと、村山繁雄先生に大阪大学の特任教授にご就任いただいた。月に1回CPC、brain cuttingなどのご指導を頂けるようになった。将来的なbrain bankが設立できるように、基礎教室を含む他科との連携を推進している。

神経生理も重要な分野である。留学から帰国した久保田智哉先生は、神経生理の勉強会を定期的に開催している。久保田先生は、筋疾患の基礎研究を保健学科高橋正紀教授の元で進めている。脳波の判読に関しては、廣澤太輔先生が静岡てんかんセンターから帰局したので定期的に勉強会を開催する予定である。

神経臨床研究に関しては、三原雅史先生が中心となり神経リハビリ研究などを含めリードしてきた。本年度4月から、その業績を認められ、川崎医科大学神経内科学の特任教授に就任された。そのため今年度から、服部憲明先生が准教授として森之宮病院から着任した。fMRIによるbrain network解析を中心に研究を進めている。また、東北大学の森悦朗先生が、大阪大学精神科の特任教授として就任された。神経内科でも併任の教授にご就任いただき、教育、研究面で全面的に協力して頂く予定である。 大阪大学では、さらに質の高い神経内科臨床研修システムが行われるよう医局員一同で努力している。脳卒中グループも、神戸中央市民病院から藤堂謙一先生が助教として着任した。血管内治療のエキスパートである。学生からも人気があり、脳卒中を希望する者も増えてきている。内科での血管内治療の専門医も更に増えてきており、国立循環器病研究センターが移転するための準備も整ってきている。貴島教授率いる脳外科とも脳卒中センターの連携は充実してきている。

最後にご報告することは、長い間医局長を勤められた中辻裕司先生が、富山大学医学部神経内科教授に就任された。日本における神経免疫のリーダーのお一人で、セマフォリン4Aが多発性硬化症で増加しており診断のマーカーになることを発見し、高値例ではインターフェロンが有効でないことを見出した。教科書に載るような仕事である。これからのご活躍が期待される。今後、神経免疫グループは奥野龍禎先生がリーダーとして運営する。長野医局長が中心となって、医局では若い医師が働きやすいような環境を整備してくれている。大阪大学神経内科は毎年着実に進化している。

大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 望月秀樹
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