教室紹介

年度報告

2014年度報告

昨年はSTAP細胞で翻弄された一年でした。その結果我々は、頻回に講習会を受けることになり、研究費の厳密な使用制限、資料の長期保存や評価法についても大学側から指導を受けております。研究費は、それぞれが獲得したもの以外に使用できないというルールは理解できるのですが、若い先生やまだこれからという研究のために、もう少し柔軟性があってもいいのではと思います。また、厚生労働省、文部科学省などの医学系研究費の多くがJapan Agency for Medical Research and Development (AME)という出口を目指した研究組織に移行し、translational researchを重点化していくという意向のようです。このような移行期で研究費獲得が難しいなか、医局の先生方は大変頑張っています。

最近の教室の研究費獲得を含め研究内容についてご報告します。まず中森先生が中心となって、大型予算の橋渡し研究を獲得してくれました。これは「核酸医薬による遺伝性パーキンソン病の治療開発」で、薬学部小比賀先生との共同研究による医師主導治験を目指します。さらに産研の中谷先生との共同でハンチントン病治療研究が進んでいます。また三原先生が中心となって、厚生科研費(これは今年度からAMEDに移行しました)「脳卒中及び神経難病の機能改善に寄与する新しいリハビリテーッションシステムの開発」を目指した予算が獲得できました。これは、NIRSで脳活動を見ながらリハビリを行う治療法で、森宮病院宮井先生との共同研究です。パーキンソン病の歩行障害は薬物療法が難しく、この新規治療法に期待しています。また基礎研究では、馬場先生が中心となって文部科学省「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」、新学術「脳タンパク質老化と認知症制御」分担を獲得しました。こちらは、パーキンソン病やレビー小体型認知症の発症機序を解明しようという研究です。海外に多くのライバルがおりますが、独自の視点で研究を推進したいと思います。免疫疾患では、奥野先生が中心となり熊ノ郷先生との共同研究で厚生科研費(AMED)「視神経脊髄炎動物モデル作成によるテーラーメード治療の確立」を獲得し、素晴らしい成果を上げつつあります。血管障害グループも坂口先生、佐々木先生が中心となって、文部科研費や大阪大学のシーズ研究などを獲得し、新規治療法の開発へ向けた基礎研究を進めています。筋グループでは、高橋先生が中心となって、筋強直性ジストロフィー症の疾患レジストリー登録を昨年10月に構築しました。厚生労働省の研究費を元に大阪大学神経内科が事務局として活躍しております。来年はこれらの研究費から成果を出し、社会や医療への貢献ができるように医局員一同努力してまいります。

次にご報告するのは、難病センター設立の話です。新難病法ができ、いよいよ難病制度の変革が進められています。大阪大学でも、難病を中心に診療している小児科や神経内科が中心になって、難病センターを設立する可能性もでてきました。その先駆けとして「大阪府難病患者在宅支援事業」が立ち上がりました。これは、医師会と連携して神経難病の方が大学病院を退院する時に、専門医が同行し在宅をサポートするというシステムです。当科では、高橋先生、隅先生が中心となって推進し、保健学科の小西先生にもご協力をお願いしています。また、府立急性期病院狭間先生、澤田先生にもご指導いただきながら連携を進めております。今後は、さらに発展できるように医師会とも連携を深めていきたいと思います。

昨年度は残念ながら、CPCが開催できませんでした。病理解剖は大学ではなかなか難しく、昨年度は一件もありませんでした。今後は刀根山病院藤村先生と共同しながら、病理研究を進めていかなかればらないかと感じています。関連病院の先生方におかれましては、是非剖検を積極的に行われますようお願い申し上げます。

大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学 教授 望月秀樹
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