研究・業績

神経変性グループ

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パーキンソン病やアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症といった加齢性の神経疾患は高齢化社会の到来とともに患者数が増加の一途を辿っており、その診断法、治療法を確立することが大きな社会的要請となっています。

私たちの研究グループでは主にパーキンソン病と筋萎縮性側索硬化症に焦点を当てて、患者さんの血液・髄液を用いた簡便で精度の高い診断法の開発や、細胞モデル・動物モデルを用いた発症や症状進行要因の解明、新たな治療法の開発を行っています。これらの研究を有機的に組み合わせることにより、患者さんの早期診断とより効果の高い治療を実施できる体制づくりを目指しています。

長野 清一

研究紹介

パーキンソン病を中心とした神経変性疾患の多くは神経細胞内の特定の蛋白質の異常集積がおこり緩徐に神経細胞死を招くと考えられており、それぞれの疾患について原因と考えられる蛋白質が多数報告されています。我々はパーキンソン病の原因遺伝子の一つであるα-synuclein、parkinに着目し蛋白質の品質管理という観点から研究を進めています。

まず、蛋白質レベルではα-synucleinが単量体から線維形成、凝集体形成へと発展していく機序を解明するべく物理化学的観点から研究を行っています。大型放射光施設SPring-8においては、翻訳後修飾されたα-synucleinに対する小角散乱実験(BL40B2)やパーキンソン病患者剖検脳のレビー小体に対するX線回折(BL40XU)および顕微赤外分光(BL43IR)による構造解析を行っており,原子力研究開発機構との共同研究では大強度陽子加速器施設J-PARCにおいて中性子散乱実験による線維形成における構造変化やタンパクの揺らぎの解析も行っています。また、大阪大学蛋白質研究所構造形成研究室との共同研究では、 同研究室で開発された交差型超音波発生装置とマイクロプレートリーダーを一体化した全自動蛋白質凝集検出装置「HANABI」(HANdaiAmyloid Burst Inducer)を用いて、α-synucleinの凝集機序の解明やパーキンソン病の早期診断技術の開発を行っています。

細胞レベルではα-synucleinと環境要因である酸化ストレスによって発生する細胞内小器官の機能異常との関連に関して研究を行っています。また、パーキンソン病の神経細胞死に関しても炎症反応の関与が示唆されており、我々のグループでは神経細胞だけではなくグリア細胞を含めた免疫機序が関与している事を見出しています。更に、これら細胞死を制御する候補物質を選定し、その神経保護効果を確認しています。

動物レベルではα-synucleinの凝集体のシードとなる線維核をマウスに投与し生体内での凝集体形成、その病変の拡散過程を画像診断学的手法および病理学的手法を用いて解析しています。また、これまでにウイルスベクターを用いて家族性パーキンソン病の原因遺伝子の1つであるパーキン遺伝子を黒質に導入すると、パーキンソン病の黒質の神経細胞死が抑制できることを示してきました。今後はより人間に近い霊長類を用いてその安全性および有用性を確認していく予定です。

我々は臨床医学講座の基礎研究グループとして常に研究成果の患者さんへの還元を意識して研究を進めていきます。

出身の大学、学部、診療科を問わず我々と共に活動できる仲間を募集しています。興味を持たれた方はいつでもご連絡下さい。

メンバー紹介

  • 長野 清一 寄附講座教授 平成4年卒
  • 医学博士、総合内科専門医、神経内科専門医・指導医、認知症専門医
  • 馬場 孝輔 寄付講座准教授 平成19年卒
  • 大手前病院、関西電力病院で勤務
  • 医学博士、認定内科医、神経内科専門医
  • 門脇 淳 助教 平成17年卒
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  • 医学博士、認定内科医、神経内科専門医
  • 池中 建介 助教 平成19年卒
  • 安城更生病院、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科で勤務
    名古屋大学では筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究に従事
  • 医学博士、認定内科医、神経内科専門医
  • 木村 康義 助教 平成20年卒
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  • 医学博士、神経内科専門医
  • 小河 浩太郎 助教 平成23年卒
  • 市立豊中病院で勤務
  • 認定内科医、神経内科専門医
  • 角田 渓太 特任助教 平成23年卒
  • 東大阪市立総合病院で勤務
  • 認定内科医 神経内科専門医
  • 大薗 達彦 特任助教 平成24年卒
  • 大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センターで勤務
  • 認定内科医、総合内科専門医、神経内科専門医
    • Choong Chi-Jing 特任研究員 
    • Institute of Postgraduate Studies and Research, Universiti Tunku Abdul Rahman, Malaysia
    • 医学博士
    • 竹内 恵里子 大学院生 平成26年卒
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    • 白旗 恵美 大学院生 平成27年卒
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    • 西池 氏暉 大学院生 平成27年卒
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    • 矢田 知大 大学院生 平成27年卒
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    • 佐伯 千寿 大学院生 平成27年卒
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    • 和田山 智哉 大学院生 平成28年卒
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    • 林 友豊 大学院生 平成28年卒
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    • 浅井 可奈子 大学院生 平成28年卒
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    • 安食 孝洋 大学院生 平成29年卒
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最近の業績

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